第4話

 ほとんど滞りなく弾き終えると、古賀は交代、と言って、また最初から弾き始める。

 優香は譜面通りに弾いているだけなのに、編曲が良いのか古賀の腕か良いのか、いつもより上手く聴こえた。


「うん、やっぱりアレンジのところ難しいね」


 お互いが両パートを弾き終わってから、古賀が口を開く。


「もう少し先だから、まだまだ練習する時間あるから」


 今はまだ九月で、クリスマスミサまでは約三ヶ月。実際、時間はあるので、そのつもりで優香はそう返した。


「時間、ね」


 古賀は少し笑ってから返答すると、用事がある、と言って楽器を片付けて始めた。


「金村さんは?まだ弾いていく?」

「うーん、どうしようかな……。あ、待って古賀君、今後の予定決めないと」


 実際、合わせるつもりではなく、今後の予定を決める為に、聖堂に来たのだ。合わせて予定を決めずに解散、というのは、おかしい。


「あー……。そしたら、毎週木曜日の放課後、ここで良いかな?」


 スマホを操作しながら古賀が言う。優香もスケジュールを確認して了承した。


「わかった。来週、日直だった気がするから、少し遅くなるかも」

「日直くらいなら大丈夫だよ、じゃあ」


 早々に楽器を片付けて古賀は聖堂から出て行ってしまった。事務室側から行かなかったので、優香は退出する時にシスターに声をかけようと思ったのである。



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