もう一人の自分

@J2130

第1話

 女性にいかがわしいことをして確保されたことが1度。

 携帯電話を落とした、なくしたのは2度。

 ひどい風邪で声が変わったのが1度。


 昔のことですが、実家の母から電話がありました。


「達也、また変な電話あったよ」

「今度はなにかな…」

「会社からあずかったお金なくしたらしいよ…」

「そうなのか…」


 もう一人の自分は何をやっているのでしょうね。

 しょうがない人だけど、叱ってやることも注意もできないな…。


 さすがに僕が50代になってからはなくなりましたが、結婚した当初はよく実家にこんな電話がかかってきました。


「おたくの息子さんが電車の車内で女性の体にさわりまして、今ここにいます」

「あの…、この時間に電車に乗りませんよ」

 母がそう言うといきなり切れたそうです。


「俺なんだけれど、携帯なくしちゃって…」

「じゃあ確認する」

 母がそう言うといきなり切れたそうです。


「ひどい風邪で声が変わったんだ…」

「大変ね、奥さんの実家は薬局じゃない、薬もらったら」

母がそう言うといきなり切れたそうです。


 おそらくもう一人の自分は、痴漢をするひどい人で、携帯電話を数度もなくすうっかりもので、風邪にかかると喉にくるタイプのようです。

 金融関係のお仕事でもしているのかな…。


 もし会うことがあったら

「親に心配かけるなよ…自分さ…」

 と言うのにね。


 実家の電話機は迷惑電話防止機能付きにしてもらいました。


                     了

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