冒頭から語られるのは一つの国に伝わる伝承。それは、重厚で、屋上屋を架していて、何故にこれほど複雑になったのか理解に苦しむ側面があります。しかし作中の人間たちは、その伝承の中を生きています。彼らは、重すぎるほど重い歴史を背負い、再現し続けています。何故に再現するのか。繰り返しに意味などあるのか。現代人がさっさと切り捨ててしまうものの中に、登場人物の人生の価値があります。伝承の重みを受け止めるべき小説です。