第9話

「ナマケンすげー! ありがとう! さすが名探偵!」

「ぶっちんがー、途中まで考えたから」


 ナマケンはにっこりする。こういうときえらそうにしないから、ナマケンが好きなんだよな!


「ナマケン! お礼するから、うちにおいでよ! お菓子あるし、一緒にゲームやろう!」


 僕はうれしさのあまり、今にも駆けだしそうだった。


 でもナマケンは「ゲームはやめた方がいいよー」とニコニコしながら忠告する。


「お母さんの言うこと、ちゃんと聞かないとー」

「どういうこと?」

 

 聞き返すと、ナマケンは僕が放りだしたクラブのジャックを拾って、こっちに見せた。


「クラブのジャックはー、右向いてるよ」

「あ、うん。そうだね」


 確か好きなものの方に顔を向けてるんだよね。

 トランプは左にマークがあって、このジャックは右向いてるから、クラブが好きじゃないってこと。


 クラブの意味って何だったっけ?


「クラブは学問だよー。左向け左! って、たぶん勉強しなさいってことだよー」


 僕は真っ赤になった。


 見つけたとたん大喜びでゲームを始めるだろうって、お母さんに読まれてたんだ!


「くっそー、お母さんめ!」


 あんまり悔しくて足を踏みならす。

 ナマケンはそんな僕をふわふわ眺めて、「宿題やって、遊ぼう」と言って笑うのだった。

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ふたこぶ女王は左を向く -ナマケモノ探偵ののんびり推理ー きりしま @kir_undersan

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