第8話
「クラブのージャックをー守っている。左向け左」
ナマケンは、散歩を途中できりあげて、僕の探しものにつきあってくれた。
二つめの暗号を見て、目玉をキョロキョロさせている。いつものあれだ。ゲームでいうところの「ロード中」。
「うちの中、見てもいーい?」
「もちろん!」
じいじに声をかけてから、僕はナマケンを中に案内した。
リビング、お風呂、トイレ、寝室に、パター練習ができる廊下。そしてじいじの趣味部屋。
その趣味部屋で、ナマケンがパチッと、一回り大きく目を開いた。
ナマケンらしくないスピードでズンズン部屋に入っていって、なぜかキャディバッグの前で足を止める。じいじのゴルフ道具が入った、僕の背丈より大きなバッグだ。
いつもは立てかけてあるんだけど、どういうわけか今日は床に寝かせてある。
「それ、ゴルフの道具が入ってるよ。重たいから気をつけて」
しゃがみこんだナマケンにそう声をかけると、ナマケンはキャディバッグを指先でつついて、
「この中じゃない?」
と言った。
え――と飛びあがった僕は、急いでファスナーを開けた。
いつもバッグの口から飛び出してくるはずのゴルフクラブが、一本もない。
そこで気がついた。
「そっか! クラブって、ゴルフクラブのクラブか!」
「うん。ゴルフクラブはー、最高で十四本持てる。けど、アマチュアはー、十一本で充分って、聞いたことある、よー」
「そういえば、じいじは十一本持ってるって言ってた」
だからクラブのジャック!
ちがう、ここでは『十一本のクラブ』ってことだ!
僕はキャディバッグの奥の方まで手を伸ばした。
すぐに手ごたえを感じた。スイッチだ!
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