空に放つ引金を今。
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記録しマす。
19XXねン。夏。激シイ雨が降っテいまス。
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「何でッ!! 何で何だよッ!?!?!?」
頭が砂嵐で
「ヒロト……気持ちは分かるけどさ、一旦落ち着こうぜ」
一人。髪を短く刈り上げた少年がそう彼を
「は? じゃあケンジはこの状況で落ち着いて居られんのかよ!?!?」
噛み付くようにそう返すヒロト。その瞳は微かに潤み、震えているように見えた。
「このままじゃ……っ………!! このままじゃあ……ッ……!!
………レンは死ぬかもしれないんだぞ………!?」
レンとハンナが研究していた人造人間が完成したのは、つい先日のことだったと記憶している。誰もがその吉報に喜び、永く夢見てきた世界の実現に興奮した顔で語り合っていた。
誰もが信じていた。誰もが疑おうとはしなかった。研究者として
「レンはそんなに弱くないもん!!
絶対ハンナちゃんを幸せにしてあげなきゃ許さないって、
あたし、ちゃんと言ったもん!!」
「それとこれとは関係ないだろ!?!?」
「そんなことないっ!! そんなこと、絶対にない!!!」
アミは涙と鼻水でぐちゃぐちゃに濡れた顔を歪ませて、悲痛そうに声を絞り出す。その様子を見て、リリーはリタの袖口をぎゅうっと引っ張った。
■■は困惑していた。頭の中をたくさんの
彼らの中の誰かが生み出した人造人間が、シアワセだった生活を壊していく。ボクたちは勝者と敗者に分けられて、全員が苦しみの最中へ引き摺ずり下ろされる。ある者は栄華に縋り付き、ある者は落魄れるのを恐れ、ある者は嫉妬に呑まれていく───
「俺見たんだ。政府の奴らが二人の腕に変なクスリを打ってるところをっ……!!
二人とも真っ青な顔しててさ、もう人間じゃないんじゃないかって。
あいつら死んじゃったんじゃないかってっ………!!」
「もうやめて下さいっ!!!」
ヒロトの戦慄に震えた声に、リリーは耳を抑え
「でも、どうしろっていうんだよっ………!!
今の俺たちに出来ることなんて、何も………っ…………!!」
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過去の記憶を検索しますか?
▶︎はい
▷いいえ
記憶を検索中───
People:
▷アミ
▷レン
▷ヒロト
▷リタ
▷ハンナ
▷リリー
▷ケンジ
Place:
▷秘密基地
▷外の世界
▶︎本当の青い空
▶︎“本当の青い空”について詳しく情報を見る。
▶︎“本当の青い空”
ハンナさんとレンさんの新婚旅行先。
今ボクたちの上に浮かぶ空とは異なる、
果てしなく美しい景色が見られるそう。
みんなで見に行くと約束している、憧れの場所───
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「本当は、どうでも良かった。
あたしは一人で、あいつを見返してやりたかっただけ。
父ちゃんの夢を叶えて、胸を張りたかっただけだった。
でも、あたしの仲間は超優しくてさ。
いつの間にかずっと一緒にいたいなんて、
馬鹿な夢を持つ様になっちゃったんだ。
いつか壊れるって分かってても、
あたしはあいつらのことを大好きになっちゃった」
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ますター、ボクは人間デハありまセン。でも、ボクはみんなガ笑っテいるところヲ見ルと、シアワセな気持チにナリます。
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「ねぇ、あたしが何であなたを■■って名付けたか知ってる??」
「知りマセン」
「ふふ、■■っていうのはね、英語で『近い』って意味なんだよ」
「チカい……??」
「あたしは■■に、ずっと側にいて欲しいんだ。
だからこの名前を付けた」
「思い出させて欲しいんだ。
あたしたちにも、こんなに幸せな時があったんだって。
皆で笑い合えた時もあったんだ、って」
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全員が、恐怖と悲哀に満ちた顔をしていた。遠くで轟く雷鳴。
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<記録100038>
今日マスターから、ボクが生み出された訳を聞きました。
ボクはみんなに幸せを届けるために生まれたみたいです。
みんなの思い出を記録して、いつかまた笑えるように。
ボクは幸せ者です。こんなに優しいマスターと出逢えて。
こんなに楽しい日々を過ごせて。
だからボクは最期まで記録します。
みんなの夢を、希望を、そして消えることのない浪漫を──
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「リタ気にしないで。僕たちは家族なんだから」
「そうよ。それにみんなで見に行った方がきっと楽しいわ」
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みんなの夢。みんなの希望。みんなの浪漫。それは───
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分析結果が出ました。公開しますか?
▶︎はい
▷いいえ
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「ますター、明日、みんなで“本当の空”を見に行きマせんカ?」
少年のその声に、全員が振り返る。
■■の瞳はどこまでも無邪気で、自信に満ち溢れているような気がした。
❁.*・゚
廻るセカイのイデア 枯れる太陽 炎天下
陽炎かげろうが揺らいだ 「忘れないで、さぁ、進もう」
もどかしさに何度でも 明日を夢に見ていた
戻らない、先のある世界へ 「僕たちで変えよう」
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