空の青さを知る者
「ごめんね、また呼び出しちゃって」
真っ直ぐ
咲穂が瑞綺と出会ったのは、まだ『
咲穂は微笑みながら声を掛けた彼をじっと見つめる。健康的な体付き、艶のある髪、その優しげな眼差し。ここで暮らしている者ではないことなど、一目見た瞬間に分かった。そんなもの、ここでは手に入らない。
依頼人は「こんな奴に助けられるなんて屈辱以外の何者でもない」と憤慨したが、咲穂には頼ること以外の選択肢を見つけられなかった。
果てしない量の瓦礫を三人で掻き分け、やっと女を救出する。しかし彼女は見るも無残な姿に変わり果てていた。四肢は千切れ、目は潰れ、もう息をすることすら
依頼人の
その帰り。咲穂は青年に感謝を告げ、何かお礼に出来ることはないかと尋ねた。彼は僅かに思案した後、にこりと微笑んで咲穂を見る。
「…じゃあこの街を案内してほしい。定期的に来ているから」
そんなもので良いのか。咲穂は少し拍子抜けする。それと同時に青年の意図が見えず、不思議に思った。
この街には何もない。ただ風化した瓦礫と
青年は咲穂の疑問に驚いたような顔をした後、少し表情を曇らせた。そしてじっと少女の瞳を覗き込む。宝石のように煌めく碧眼。その瞳は魅惑的で、咲穂の心を
その時瑞綺が呟いた言葉が忘れられない。
「…見るためだよ」
…見るため?
そう。
──自分たちが犯した罪と、本当に美しい人々を見るためだよ。
その日からだ。彼の目が澄んだ空を連想させるようになったのは。
咲穂は瑞綺と共に歩き出す。彼は【狩り】の後いつも、ゲヘナに足を運んでいた。
「…あ、それにしても。『
街を歩きながら、瑞綺がふと尋ねる。干されている麻地の衣類が風に吹かれて揺れていた。その上では、昨日の雨を忘れさせるほどの快晴が広がっている。咲穂はその空を仰いだ。
「全然。全く手がかりなしです」
彼女がそう告げると、「そっか」と短い返事が返ってくる。瑞綺は咲穂が知る中で、唯一『
「どうすれば会えるのかな」
もう『
「案外身近に潜んでたりして…なんてね」
風が吹き渡り、遥か遠くへと流れていく。案外身近…か。そうかもしれない。この時も『
「……大丈夫、いつかきっと会えるよ」
瑞綺は確信を持ったようにそう言って、彼女の頭を撫でた。男性にしては繊細な、細い手。彼女はそれに応えるように、顔をあげてにっこりと笑う。
「もちろんですよ、絶対会いに行きますから」
『
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