第241話 エピローグ

 チュンチュン、チュンチュン。


「朝か・・・」


 俺は眠い目を擦り、隣で寝息を立てている瑞希を見つめていた。

 ダンジョンから帰還して魔王の討伐宣言を出してから早数ヶ月が経過し、漸く復興が落ち着いたのもあり瑞希との初夜を迎えていた。

 高校を卒業したはずの日を越えたからだ。


 各地を回り、俺は精力的に復興の為に働いた。

 特にアーリバンは傷が深かった。

 あのカーラはニーナの治療もあり、軌跡的に正気に戻っていた。

 シャルルを伴って尋問したが、驚いた事に俺達を召喚したのは本当に魔王を討伐する為だと言っていた。

 魔法陣がなくなったのでもう返送の義は無理だが、この世界で死ねば召喚直前に戻り、元の体ではあるが記憶を持っていると言う。


 シャルルによると嘘ではないと。

 少なくとも本人はそう思っているのだと。


 瑞希は目を覚ますと俺と1つになった事を再認識して泣いていた。

 服を着るとメイドが朝食の準備が出来たと告げて来たので食堂に行く。


 もう皆集まっており、俺が席に着くと食事が始まる。


 食事を終えると俺は日課になっているニーナのお腹に抱着き、状態を確認する。

 おっ!


 ニーナも嬉しそうに1言言った。 


「お腹を蹴ったぞ!感じた?」


「ああ、感じたぞ!ニーナに似た可愛い女の子だと良いな!」 


「アタイは男の子のような気がするよ」


 瑞希やみっちゃんもお腹を撫でに来る。

 俺の最初の子はニーナが身籠った。


 次に身籠ったのはみっちゃんだ。

 彼女はある理由から早々に子を欲しがった。

 そして俺は子宝に恵まれた。


 ・・・・・


 月日は流れ、俺達の活躍により平和で豊かな国になっていた。

 俺は多くの妻達と幸福に暮らしていたが、今は死を待っていた。

 老衰と言うやつだ。


 皆死んだ。

 瑞希は先月だ。

 俺も病に蝕まれており、何とか葬儀をするまでは歩けていたが、葬儀の後はもう寝たきりになっていた。

 今生きているのはみっちゃんだけだ。


 そして俺は今、息を引き取ろうとしており、みっちゃん、沢山の子供達、孫、ひ孫に看取られようといている。

 みっちゃんはまだ20代の若さを保っている。

 俺が新たな妻を娶らないと告げてからは、俺の為として子供を産んだ後は若さを保つ秘策を使った。

 アイデアは瑞希だ。

 辛い思いをしつつ俺の為に若い体を維持していた。


 ドッペルゲンガーは歳を取らない。

 魔力を注ぎ込むと1週間程出続ける事が出来る。

 限界近くになると本体は自殺したり、ドッペルゲンガーが自らの本体を殺していた。

 それによりドッペルゲンガーが本体となるのと、本体の記憶も引き継ぐ。


 子供を産んでから数十年に渡りそれを繰り返してきたので、再びドッペルゲンガーを出せるようになるインターバルタイム分しか歳を取っていない。

 多分肉体年齢は25歳から26歳だと思う。


 彼女は俺を弔ってから後を追うと言っていた。

 自由に生きろと伝えるも、俺のいない世界で生きる意味がないと。

 そしてお迎えがきた。

 みっちゃんの膝枕で逝かせて貰った。本当は腹上死が良かったが膝枕も良いかな。

 手を握られ、頭を撫でられて・・・・意識が遠のく。

 皆、今そっちに逝くからな・・・

 フッ・・・


 バーン!


 光が弾けた。


 ここはどこだ?

 あれっ?

 駅だ・・・

 若い頃の瑞希がしがみついている。

 ズボンが緩い・・・ベルトを1番きつくした。


 ここはあの日の・・・横浜に花火を見に行こうとしていたあの時だ。


「栃郎さん?えっ!?若い?」


「瑞希ちゃん、俺が分かる?」


「分からない訳ないでしょ?あなた」


 俺は頷くと周りを見る。

 皆混乱している。


「瑞希、カーラが言っていたのは本当の事のようだ。俺はひと仕事しなきゃだからみっちゃんと一緒にいてくれ」


「分かったわ」


 俺はステータスを見た。

 飛翔、無限収納、タウンドリフト、隷属契約、・・・違うじゃねえか!3つじゃなくて4つ持って帰ったじゃないか!


 収納に入っている硬貨を1枚出し、再び収納に入れた。


 俺は飛翔でひとっ飛びし、不良共5人の体に次々と触れ奴隷とした。


 丁度俺に背を向ける形だったからチョロかった。

 そして5人の前に回り込み事実を告げた。


「俺の奴隷にした。心を入れ替え真っ当に生きろ。犯罪を犯すな。結婚した相手以外とのセックスを禁ずる。正当防衛と英雄的行動以外の暴力を禁じる。それと奴隷にされた事、俺の力について話したり誰かに伝える事を禁じる」


「なっ!まじかよ!クソっ!」


 駅は騒然となっていた。


 瑞希達がいた所の近くで何かが爆発したからだ。

 みっちゃんと瑞希の元に俺は向かった。

 すると2人は俺に抱きついてきた。


「瑞希、みっちゃん、向こうの事を覚えているか?」


「勿論よ!あ・な・た!」


「私も年老いて死んだと覚えているわよ」


「帰ってきたら俺の所に来い。それと俺はどんな見た目だ?」


「あの時と同じ18歳よ」


「俺は、おっさんの俺は行方不明になった事になるだろう。多分この事件で死んだと」


 俺は銀行の身分証明書が入った名刺入れを爆発があった所に置き、収納にあった犯罪者の焼死体を出した。


 収納の中身はそのまま入っていた。

 また、荷物は今持っているのと、収納にあったのとダブったので、カメラのカードを入れ替えるとカバンも死体の側に置いた。財布もダブった。

 お金を少し抜き取ると死体の側に置いた。


 瑞希達と落ち合う約束をし、瑞希とみっちゃんの連絡先を聞いた。

 その後高校生達はなんとか修学旅行をしたがニュースで謎の爆発事故で俺が死んだと発表された。


 その後収納の中身を現金に変え、裏社会の力を使い、病死した者に成り代わった。


 また、収納にあった妻達の遺髪を墓に入れこの世界で弔い定期的に墓参りをする。


 その後瑞希とみっちゃんと再び恋人になり・・・・・3人で暮らし始めた。


 みっちゃんは向こうの世界を舞台にした小説を発表し大ヒットした。

 その後別ネームの官能小説と同一人物とばれる・・・俺と瑞希と重婚しているとばれ、世間を騒がせた。


 瑞希は俺の秘書をしてくれていて、今日も俺と2人で謎の運び屋として世界を飛び回るのであった・・・・




 終わり


 最後まで読んで頂きありがとうございます。


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 また、新作を投稿開始しました。

2023/2/11


ザ・タワー 〜俺にしかできない魔石を鑑定する能力!その魔石での魔法&スキル付与!この力で最強を目指す〜


迷宮物です!

こちらも宜しくお願い致します!


m(_ _)m

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異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜 鍵弓 @keybow5963

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