第3話
「うん……エミュレットが淹れる紅茶の方が美味い」
お父様と私は近くのカフェへ行き、くつろいでいました。
「そうですか? 私はこの酸味の効いた紅茶も好きですよ」
お父様は朝早くから出かけて、商会に訪ねてデネブの扱った品を確認してきたようです。すると、表面はよくても、中身が腐ったり、病気になっている食べ物や、金の含有量が基準を満たしていない物などだったそうです。
「お前のおかげで私はヒーローになったわ」
お父様の指示のもと、この町にデネブ包囲網が敷かれ、デネブを拘束。商人という身分を永久剥奪はもちろんのこと、牢に入れられることになるそうです。
「それは、何よりです」
お父様は私の顔を覗き込みますが、私が表情を少しも変えないことが、不安になったのか、
「お前には、私の軽率な判断で迷惑を掛けた。本当に申し訳ない」
立ち上がったお父様深々と頭を下げてくださいました。父親がここまでするとはよっぽどのことなので、店員の方や他のお客様が私たちを見てきますり
「いいえ、お気になさらずに。昨夜私をお使いに出したのも、お父様ですから」
私が笑ってそうお伝えすると、「お前には敵わないな」とお父様はおっしゃいながら、笑いました。なので、私はお父様にお座り頂くように促して、お願いごとを聞いてもらうことにしました。
「なんだ? なんでも、言ってみろ。今度は貴族か? 任せろ、商会の中でも発言権がある私なら……」
「逆です」
「逆?」
私はニコリと笑う。
「自分の結婚には、自分で決めたいので、口を出さないでいただきたいのですがよろしいでしょうか」
「しかしだな……得体の知れないような男は……」
「デネブ様のことですか?」
「………わかった。エミュレットの言う通りにしよう。だがな、エミュレットが結婚するときには、素晴らしい宝石とほっぺが落ちるような各地のご馳走を用意させてもらおう。それぐらいならいいだろう?」
「ええ、嬉しいですわお父様。さすが、私の大好きなお父様ですわ」
お父様も反省していますし、私に対しての名誉挽回の機会が欲しいようでしたので、お願いしました。
「あぁ、でも早く孫が見たい……あっいや、そろそろ行こうか」
私たちは立ち上がり、お店を出ようとします。そうですね、もし恋をするなら、嘘をついたり騙そうとしない人がいいですね。
「あっ」
そんなことを考えていたら、前方不注意でぶつかってしまいました。
「ごめんな…」
「こちらこそ、申し訳ない」
優しい青い瞳にサラサラの金髪。きめ細かい肌にシュッとした頬。私好みの男性でした。この人になら私は……
騙されても良いと思いました。
けれど、そのお方は最後まで私を騙してくださりませんでした。彼に理由を尋ねると、「私と結婚式で真実の愛を誓ったから」だそうです。
fin
不貞を働いた貴方に言うことは特にございません。 西東友一 @sanadayoshitune
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