無人島だった島

ツヨシ

第1話

島がある。

無人島だ。

たいして大きくはない島だが、中央には祠があり、地元では神聖な島だとされていた。

人が住んではいけないところだと言われている。

ところがある日、島の管理人が久しぶりに島の様子を見に行くと、男がいたと言う。

絵に描いたようなホームレスの格好をした男が。

管理人が男を見つけた時、男は粗末なテントの横で魚を料理していたそうだ。

「なにしてるんですか?」

そう言うと男は、あっという間にテント類を片付け、それを持って近くにあった手漕ぎボートで逃げてしまったそうだ。

「ほんと、早かった」

とは、管理人が後から言ったことだ。

しばらくして、心配になった管理人が島の様子を見に行くと、またあの男がいたそうだ。

そして再び私物を抱えて逃げてしまったと言う。

男の正体について議論されたが、ただのホームレスと言うことに、すぐさま落ち着いた。

「あそこは神聖な場所なのに。あの島は無人島でなくてはならないのに。どこの誰ともわからないホームレスが住み着くなんて」

島の持ち主はお怒りのようで、「あんなやつ、祠の神様に願って、叩き出してやる」と言っていたようだ。

そんな中で管理人が島の様子を見に行くと、またもやあの男がいたそうだ。

いつものように秒で逃げる。

ボートを漕ぐのも恐ろしく早い。

管理人が唇をかみしめながらボートを見ていると、そのボートのすぐ後ろの水面下に影が見えたと言う。

大きい、とても大きい黒い影が。

その影はボートを追うように進んでいたそうだ。

その後、島であの男を見ることはなくなったと言う。


       終

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無人島だった島 ツヨシ @kunkunkonkon

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