第10章 帝国動乱④ 第53話
第53話 偽装の装甲列車 (アリス16歳と半年)
様々な思惑、陰謀や策謀を載せて装甲列車は出発する
王弟派のスパイが定刻通りに列車が出発した事を繋ぎの者に連絡をすると、
ホームにいたスパイは繋ぎの者に連絡を入れた直後に音も立てずに次と々A機関員(スパイ組織)に在る者は捕縛、在る者は静かに殺害されていく。
(捕縛者は証言の為の証人だ。殺害されるのは暗殺者と正体が分かっている者)
それを実行していくのはA機関員と辺境伯の暗部組織だ。在る者は商人、在る者は冒険者などに偽装している
列車内の一般客車内の王弟派のスパイへの見張りはA機関員だ
王弟派のスパイ組織は質が悪いのか自分達が見張られている事に誰も気が付いてはいない。それも、その筈、王弟派の暗部に雇われたのは冒険者か傭兵だったから、
専門の人間は、ほぼ王都内にて王弟派同士で互いを見張っているからだ。
何故その様な事象が起きているのか?
貴族は平民に比べて高い水準の教育を受けて能力と人間性を獲得した者として領民を収め無くてはならない筈の本来の貴族の責務。
だが高い教育を受けて能力は高いが傲慢さも高く、甚だ礼節を欠いた者
生来の能力が教育に付いて行けなかったり、求められた高い要望に力が及ばず心が折れて心を病んで捻くれた者。
又はひたすら甘やかされて育った、気位だけは人一倍高い惚け者、
一口に貴族と言っても様々な種類の人間が存在する。
そして能力人格共に申し分ない傑物であろうが俄かには信じがたい程の低能で品性が下劣なカスであろうが、特に上級貴族のともなれば共通しているのが非常に疑り深いという事だ。簡単には人を信じない。
いつでも自分の利益になる事ばかり考えて簡単に人を裏切る。
特に品性が下劣な人物程、自分の考える事は他人も考えるだろう、と信じているからだ。
キルヒアイス領には連絡員以外はA機関と辺境伯の暗部が主力になっている。
北隣のアグスタ領との関所と言う名の砦には辺境伯の精鋭騎士団と王都の近衞騎士団の精鋭が滞在している。此処への連絡は列車の発車の合図の汽笛と同時に打ち上げられる花火が合図だ。花火と共に騎士団がアグスタ領都に侵攻する。
騎士団の先導は冒険者や商人に扮したキルヒアイス領兵だ。元々、冒険者や傭兵上がりだった彼等には容易い任務だ。周辺の地元民で地理に詳しいと言うのもある。
途中の監視哨や領地巡回の詰所は合図と共に無力化が始まった。
アグスタ領内の兵士は少なかった。大半の兵士は列車の襲撃地点で野盗に扮して隠れていたからだ。
彼等は全て既に侵入していたスパイトフル傭兵団によって密かに見張られている。
傭兵団の所在は鉄道警備として駆り出されている事になっている。
鉱山鉄道の線路には一定間隔で案山子が立っている。
それは傭兵団を模した案山子だ。
対岸の遠目からだったら分からないだろうと随分と人を食ったアイデアだよねぇ
そして、その噂を確実にする為に傭兵団とキルヒアイス軍は線路上の要所に姿を隠して防衛にあたる。一部の部隊は対岸のアウグスタ領に潜んでいる。
人は自分の都合の良い噂を信じる。
特に人を裏切る事に何の躊躇いの無い指導者達は、特にそうだ。
アグスタ領の領主は正にそんなタイプだ。
尊大で人は信用せずに金に汚い、そんな領主だった。
それにA機関は少し前からキルヒアイス領の防衛は領主が費用をケチって手薄だと言う噂を流していた。
警備は実際のキルヒアイス領の戦力の1/4程度という嘘の情報を流していた。半数以上を冒険者に偽装していた。キルヒアイス領の魔の森の開発で冒険者を多数雇っていたし、傭兵の半数以上は金鉱山の秘密の砦で防衛にあたっていた。
装甲列車の発車と共に発動される王弟派に対するカウンタークーデターとも呼べる作戦。
様々な欲望と思惑を陰謀や策謀で味付けしてアリスシティ中央駅より登山鉄道上り列車が今、発車する。
オルザルド帝国第3王子ヨハン・サライラス・オルザルド、帝国財務相オーエン・バレンシュタイン公爵とキルヒアイス子爵と大賢者アーデルハイド・キルヒアイス夫妻とその娘、アリス・キルヒアイス子爵令嬢らを餌にして。
ERROR 腐女子転生物語 腐女子OLがゲーム世界転生の筈が異世界に転生しちゃった件 奇譚亭狂介 @coco19940608
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