89.騎士団の落ち度

「……感動の再会をしている所、申し訳ないのですが」


 私とスライグさんとセレリアさんが話している中、マルギアスさんはそのように切り出してきた。

 その顔は真剣だ。そして、同時に二人を警戒しているような気がする。


「あなた達がしていることは、とんでもないことです。騎士団の機密情報に触れるなんて、騎士団……いえ、それ所か、王国に対する反逆のようなものです」

「お言葉ですが、僕達は商人としての情報網を使ったまでです。何も違法なことはしていません」

「しかし……」


 マルギアスさんは、二人の行いに対して怒っているようだった。

 彼からしてみれば、それはそうだろう。騎士団の機密情報を探る。それは、騎士のマルギアスさんにとっては、許せないことだろう。


「そもそも、商人の僕達に話が入ってくる時点で、騎士団の管理が杜撰だったのではありませんか?」

「それは……」


 スライグさんの言葉に、マルギアスさんは怯んでしまった。

 それは、スライグさんの言っていることが正論だったからだろう。

 機密情報を探っていいという訳ではないとは思うが、それがそもそも機密になっていなかったのは、騎士団の落ち度だろう。

 人の口に戸は立てられないかもしれないが、私の情報は隠されていなかった。それは、確かな騎士団の失敗である。


「……別に、僕達は騎士団を責め立てようとは思っていません。あなた達が、本当にルルメアさんを守ってくれるというなら、それはこちらとしてもありがたいことですからね」

「む……」

「ただ、僕達はルルメアさんに会っておきたかったのです。彼女の無事をこの目で確かめたかった。それだけのことです」


 スライグさんとセレリアさんは、自分達の目で私の無事を確認しておきたかったようだ。

 それは恐らく、騎士団のことを完全に信用できていなかったからだろう。私はズウェール王国の元聖女として、元々目をつけられていた。そのことで何かしらのことが起こっていないのか、確認しておきたかったのだろう。

 実際の所、私は無事である。だが、彼らからそれはわからない。ひどい扱いを受けている可能性も、彼らは考えていたのだろう。


「あの……立ち話もなんですから、とりあえず中に入ってもらってもいいですか?」

「……そうですね。わかりました」


 私の言葉に、マルギアスさんはゆっくりと頷いた。少し渋々といった様子で、仕方ないといった感じだ。

 こうして、私はスライグさんとセレリアさんを屋敷の中に招くのだった。

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