88.侮れない情報網
「あの方達なのですが……」
「ああ……確かに、彼らは私の知り合いです」
「そうですか」
私は、マルギアスさんとともに屋敷の玄関の近くまで来ていた。
物陰から様子を窺ってみると、確かにスライグさんとセレリアさんがいる。どうやら、本当に二人がこの屋敷を訪ねて来たようだ。
「とりあえず、出て行ってもいいですか?」
「ええ」
驚きながらも、私は玄関に出て行くことにした。
二人が、どうしてここに来たのか。色々と気になることはある。
ただ、二人と再会できるというのは、嬉しいことだ。そのため、私は思わず笑みを浮かべてしまう。
「あっ……」
「ルルメアさん……」
私が出て行くと、二人も笑みを浮かべてくれた。
その表情に、私はさらに嬉しくなってしまう。日にち的には、それ程長い間別れていた訳ではない。だが、私はこの再会が嬉しくて仕方ないのだ。
「お久し振りですね、お二人とも」
「ええ……無事だったんですね?」
「……はい、この通り、私は全然大丈夫ですよ」
「良かった。安心しました……」
スライグさんとセレリアさんは、私の元気そうな様子に安心してくれていた。
相変わらず、二人は優しい人達だ。私のことをこんなにも心配してくれるなんて、ありがたい限りである。
「それにしても、どうしてお二人がここに? 残した手紙に、大まかな事情は書きましたが、この場所のことは伝えていなかったはずですが……」
「ナルキアス商会にも、色々と伝手があるのです。情報網を駆使して、あなたの居場所を知ったのです」
「そうだったんですね……」
スライグさんの言葉に、私は驚いていた。
ナルキアス商会は、大きな商会である。それは知っていた。
だが、まさか騎士団の秘密にまで触れられる程に力を持っているとは思っていなかった。それだけ、商人の情報網はすごいということなのだろうか。
「あなたから手紙をもらって、ナーゼスからも話を聞き、僕達はあなたのことが心配で仕方ありませんでした。だから、こうしてここまでやって来たのです」
「そんな……私のために、そこまでするなんて……」
「あなたは、私達の大切な友人です。その人のために行動するのは、当たり前のことです」
私の言葉に対して、スライグさんははっきりとそう答えてくれた。それは、とても嬉しい言葉である。
彼らの行動力は、すごいとしか言いようがない。いくら大切な友人だと思っていても、ここまでできる人などいないだろう。
「ありがとうございます」
「いえ、気にしないでください」
私は、そんな二人に自然とお礼を言っていた。私は改めて思う。本当に、私はいい友人と巡り会えたものである。
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