90.事情の説明
「という訳で、騎士団は私のことを本当に守ってくれています」
「そうですか……その話を聞いてまた安心できました。しかし、まさか、そんなことになっているなんて……」
「ええ、この国で一体、何が起こっているの……?」
スライグさんとセレリアさんを客室に招いて、私はこれまでの経緯をある程度話しておいた。
ナルキアス商会に送った手紙には、グーゼス様やルミーネのことは詳しく伝えていなかったが、今回は、ある程度伝えることにした。ここまで来た二人には、その事情も明かしておくべきだと思ったのだ。
二人は、この国で起こっている問題に対して、困惑していた。それは、そうだろう。これは、誰だって驚くべきことだ。
「ルルメアさんが何者かに狙われているとは聞いていましたが、ズウェール王国の王子が、しかも化け物になっているなんて、にわかには信じられないことですね……」
「ええ、でも本当なんです」
「わかっています。ルルメアさんが嘘を言っているとは思っていません」
スライグさんは、私のことを信じてくれている。そのことが、私は嬉しかった。
普通に考えて、こんな突拍子のないことは中々信じられないだろう。それを信じてくれる程に私を信用しているという事実には、感謝の気持ちしかない。
「騎士団が、本当に守ってくれているという事実もわかって良かったわね、兄さん」
「まあ、それはそうだな……」
「兄さん、ナーゼスさんと一緒にひどく心配していたんですよ」
「そうなんですか……」
「セレリア、それは言わなくていいから……」
スライグさんだけではなく、ナーゼスさんも私のことを心配してくれていたようだ。それも、ありがたいものである。
「……騎士団の誤解が解けたというなら、それは何よりです」
「あ、えっと……」
そこで、マルギアスさんがそのように口を挟んできた。彼にしては珍しく、その口調は少し攻撃的である。
そういえば、彼は騎士団に強いあこがれを抱いて騎士になったのだ。そんな彼にとって、騎士団に対して疑念を抱かれるというのは、あまり気持ちがいいことではないのかもしれない。
「改めて言っておきますが、騎士団はルルメアさんを守るつもりです。そこに他意はありません」
「ええ、そうですね……」
マルギアスさんの言葉に、スライグさんはゆっくりと頷いた。しかし、その表情から疑念が消えているという訳ではなさそうだ。
それは、当たり前のことである。例えマルギアスさんがそう思っていても、騎士団がそういう考えとは限らないからだ。
ただ、マルギアスさんがいい人であるということは、二人にもわかってもらえただろう。それがわかってもらえたなら、私としては嬉しい限りだ。
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