61.重要な役割
私はドルギアさんとともに、騎士の詰め所に来ていた。今日は、ここで一晩を明かすのである。
「ド、ドルギアさん、急にどうされたんですか?」
「ま、まさか、あなたが来られるなんて……」
ドルギアさんの急な来訪に、詰め所の騎士達はかなり焦っていた。
もしかして、彼はそれなりに地位がある人物なのだろうか。私なんかの尾行をしていた所を見ると、そこまで高い役職のようには思えなかったのだが。
「ドルギアさん、あなたは一体何者なんですか?」
「お嬢ちゃん、それはどういう質問なんだ?」
「その……皆さん、とても緊張しているみたいですし」
「……ああ、俺の騎士団での立ち位置ということか」
私の質問に対して、ドルギアさんは少し気まずそうに笑っていた。いつも楽しそうに笑う彼としては、珍しい種類の笑みである。
「まあ、それなりの地位はあるといえるか。一応、これでも結構重要な役割に就いているんだ」
「重要な役割ですか……あ、そういえば、あの同僚さんはどうなんですか?」
「え?」
そこで私は、ドルギアさんの同僚さんのことを思い出していた。
彼は、ドルギアさんよりも地位が高そうに見えた。私と話す時、明らかに主導権は彼にあったからだ。
ドルギアさんが高い地位なら、彼はもっとすごい地位ということになる。もしかして、騎士団の重役だったのだろうか。もしそうだとしたら、私と年齢は、そう変わらないのに立派なものである。
「……お嬢ちゃん、面倒なんでもう打ち明けておくが、実の所あの方は騎士ではない」
「え?」
質問に対するドルギアさんの答えに、私はかなり驚いた。
その彼の言い方が、今までとはまったく異なるものだったからだ。
あの方、そうやって呼ぶということは、その人物はかなり高い身分の人物であると予想できる。
そういえば、ドルギアさんは王都の騎士だ。ということは、もしかして彼はそこに住まう高い地位を持つ人物なのだろうか。
「ヒントとして、俺はロイヤルガードだと言っておこう」
「ロイヤルガードって……それじゃあ、やっぱり……」
「まあ、そういうことだ。秘密にしておいてくれよ?」
「……わかりました」
ドルギアさんの言葉で、私は大体のことを理解した。
彼がロイヤルガードであるということは、あの人物は王族だったということなのだろう。
王族が、どうしてこの町にいるのか。それは、わからない。
だが、私は随分ととんでもない人と話していたものである。結構、強気に発言していた気がするが、大丈夫なのだろうか。
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