17.故郷の状況
「という訳で、私達は君の正体をわかっている。元聖女、これ程に有力な人材を放っておく訳にはいかない。というのが、私の考えだ」
「なるほど……」
私は、セレリアさんが大丈夫だと言っていた意味を理解した。私が聖女だとわかっていたなら、それは大丈夫だろう。自分で言うのもなんだが、聖女だったというのは、大きなステータスだからだ。
「おっと、勘違いしてもらいたくはないので言っておくが、二人は善意から君をここに連れてきた。例え君が聖女でなかったとしても、それは変わらなかっただろう」
「……ええ、私もそうだと思います」
サルドンさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
確かに、二人なら私が聖女かどうかなど関係なく、ここまで連れて来てくれただろう。今まで接してきて、それはわかっている。二人は、いい人なのだと。
「さて……私は、ズウェール王国の動向も把握するようにしている。まあ、今回は子供達が旅行していると知っていたため、猶更だった。そのおかげで、私は知っている。聖女がやめたということを」
「ええ、私は聖女をやめてきました」
「そうか……ただ、その後何が起こっているか、君は知らないだろう」
「え?」
私は思わず、おかしな声をあげていた。サルドンさんの言っていることに、驚いてしまったからだ。
その口振りからして、ズウェール王国の王城では、私が去った後何かが起こっているのだろう。
初めは驚いていた私だったが、考えてみればそれはそれ程おかしくないと思えてきた。あそこで何かが起こる。それは、あり得ないことではないと思えたのだ。
「……一体、何が起こっているのですか?」
「なんでも、王城で次々と退職者が出たらしい。いや、退職志願者とでもいうべきだろうか」
「退職志願者?」
「あまりに多くの退職者が出たことによって、王国はある手段を取った。その者達を王城内に閉じ込めたのだよ」
「なっ……」
どうやら、王国は非人道的な手段を用いたようである。王城内に人を閉じ込めるなんて、それは普通では信じられないことだ。
しかし、あの王国ならそれもやると思える。思える程に、あの王国の王族はひどい者達なのだ。
「どうやら、ことの発端は君の退職のようだ。そこから、芋づる式に退職者が増えていったそうだ」
「私が発端……?」
「君には影響力があったようだね。それなり、慕われていたんじゃないか?」
「それは……」
私は、少し困惑していた。自身に、そこまでの影響力があるとは思っていなかったからである。
確かに、嫌われていなかったとは思う。ただ、私がやめるからとそこまでやめることになるなんて、思ってもいなかったことである。
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