-26- 初夏

私が不意に手紙を出したので、礼央は驚いたようだった。


「今、読んでいい?」

「うん。」


礼央は、ゆっくり、ゆっくり、手紙を読んだ。私は緊張のし過ぎで、どこを見たらいいか分からなかった。


礼央は、顔を上げて言った。


「多分、大人になったら、なんでもないことを、僕たちは悩みすぎているんだよ。違うことかもしれないけど、僕だって、悩んでいることはあるんだよ。」


「聞いた方がいい?」

「もう少し、秘密にさせて。」

「私、ずっとひとりでぐるぐる考えてたけど、人に話すと、救われることもあるんだね。」

「一応、僕ももう高校生だから。」

「私、これから化けるかな。勉強ももっと得意になって、人間関係ももっと上手になって。」

「化ける、化ける。夏期講習もあるしね。」

「一緒に勉強していい?」

「そのつもりだよ、もちろん。」


私は、礼央が秘密にしたいことが何か、なんとなく分かった気がした。

もし、それが何か合っていれば、私が礼央に秘密を作らせていると思った。

礼央は、私にそっと近づいたけど、また、そっと離れた。


真夏が始まる匂いがした。


−琴葉は恋愛活動中です。 終わり−

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