2年が経つ。王都に行く

2年が経った。


1年目は、ギルマスに金を借りて過ごしていた。

2年目になると、安定した収入が得られるようになった。


2年も経つと俺の身長も少しは伸び……てなかった。

成長期イズどこ!?


後、貯金も増え、お金に余裕が出来た為、家も買ったな。


そして、この2年で驚くことがあった。


「パパ!」


クロルちゃんが、人化出来るようになった。

レアルさんに似て、可愛い女の子だ。黒髪ショートでお目目がくりくりだ。

……そんなクロルちゃんだけど、何故か、俺の事をパパって呼んでくる。


「こら、俺はパパじゃないっていつも言ってるだろ?」

「むぅ……パパはわたしのパパなんだもん!」

「カオルよ、すまないな」


パパって呼んでくれるのは嬉しいことだが、そうなるとレアルさんと……結婚?することになるから……。

いやいや、15歳の俺にはまだ早すぎるぞ!?

それに、レアルさんがいいって言ってくれるわけないし……。俺とレアルさんじゃ釣り合わないし……。


「ほほ……カオルとクロルちゃんは仲が良いねぇ……」

「ギルマス、仕事は?」

「カオルに言われなくても大丈夫さね」

「ハイハイ」


全く……とギルマスは呟く。


「そうそう……カオルや、学校に通わないかい?」

「学校?なんでまた……」

「15歳から大体の子は王都にある学校に通うさね。

資金も国が出してくれるから、お金の心配はいらないさね」

「でもなぁ……」


あんまり学校にいい思い出が無いんだよね……。


「カオルには、同年代の友達がいるかい?」

「え……」


冒険者のおっさんでしょ?おっさんでしょ?おっさんでしょ?ギルマスでしょ?受付嬢の3人でしょ?それから……って、俺の知り合いに同い年が居ない!?


「ほら、丁度いい機会さね。さっさと行きな!」

「でも、レアルさんとクロルちゃんが……」

「ん?余が心配なのか?」

「いや、そうじゃないけどさ……」


レアルさんに万が一のことあるわけが無い。

だって、レアルさん俺よりも強いし。


「パパ、わたしも大丈夫だよ……?」

「う……」


ということで、王都の学校に行くことになりました。

レアルさんとクロルちゃんは家でお留守番だそうです。


「絶対仕送りするからねー!」


俺はそう叫ぶ。


「そうか。気にしなくてもいいのだが……」


なんて声が聞こえたが、絶対に仕送りする。


こうして俺はレアルさん達に見送られながら、ワルンから旅立った。


ギルマスは王都まで数日かかるって言っていたが、日が落ちる前には王都に着いた。


「ここが、王都か……」


ワルンよりデカい。

まあ、そりゃそうだよね。


「止まれ。身分証を出せ」

「はい」

「ギルドプレートか。ほう……マスターランクなのか。

自分の名前を言えるか?」

「カオル・イイダです」

「うむ、合っているな。通っていいぞ!次!」


王都の中に入る。

日も暮れていたが、店の明かりなどで通りも明るい。


「……宿空いてるかな?」


結果、ダメでした。


「冒険者ギルドよー、助けてくれー」


外観は、ワルン支部より大きく豪華だ。

そして、扉を開けギルドに入る。


「寝る場所無かったので、仮眠室で寝かせてくれない?」


入って、早々にこんなことを言う冒険者がいるだろうか?

そう、いる。俺だ。


「は、はぁ……。残念ですが、仮眠室はあいにく満室でして……」

「うそん……」

「近日中に学校が始まるそうで、遠くから来た人達がここで寝ているんですよ。

もしかして、貴方も学校に通う学生さんですか?」

「そうですよ。ワルンから来ました」

「中々遠いところから来ましたね」


……あ、そうだ。


「ワルン支部からカオル・イイダ宛に、書類が送られてきて無いですか?」

「少々お待ちください……あぁ、ありましたよ。

丁度、今送られてきた物ですね。

学生証などが入っているそうです。確認してください」

「うん、全て入っているね。ありがとう」


そして、俺はその書類をアイテムボックスに入れる。


「アイテムボックス……」


どうやら受付嬢さんはアイテムボックスが気になったようだ。

ちなみに、手作りだ。

構造を理解した為、生成することが出来た。


「んー、どうしようかな……。受付嬢さん、俺とお話しない?暇だからさ」


俺、ナンパみたいだな。


「いいですよ。この時間から依頼を受ける人はあんまりいませんから。

私も暇なのです」


でも、受付嬢さんが、応えてくれたからオーケーだろ。多分。


受付嬢さんの名前は、アルマスさんという。

出身も育ちもここの王都だそうだ。

ギルドの受付嬢をして五年もするベテランさんだ。


「へー、マスターランクなんですね」

「仲間が強くてね。依頼をこなすのが簡単なんだよ」

「なるほど……ご自身は強くないと?」

「まさか。強くなかったら、とっくの前にこの世からおさらばしてるよ」

「ふふ……冗談ですよ」


お喋りをしていると、急にギルドの扉が勢いよく開かれた。


「アルマス!今日こそ俺の女になってもらうぞ!」


などと、男が怒鳴りながらズンズンとこっちに来る。


「はぁ……言っているでしょう?私は、あなたの妻になる気は無いと」

「何を言っている?お前は俺の婚約者だろ!?」

「昔のことです。正式に破棄をしました。その書類も残っています」


アルマスさんは心底嫌そうな顔をしている。


……目の前の男の人結構イケメンだけど、何が嫌なんだろう?

……性格だよね、絶対に。


「うるさい!ほら、こんなとこに居ないでさっさとこっちに来い!」


男は勢いよくアルマスの手を掴もうとする。


「何をしている?」


まあ、俺が止めるんだけどね。


「な……貴様になんの関係がある!」

「さっきまで、楽しくお喋りをしていたのに、あんたに邪魔されたんだ。

どう責任を取ってくれる?」


俺は若干威圧する。


「く……もういい。今日はこの辺にしておこう!」


そう言って、男は去って行った。


「はぁ……全く。あの人には困った物ですね。

カオルさん、ありがとうございます」

「いえいえ、いいんですよ」

「手を上げていたらペナルティを課してましたけどね」

「厳しいね……」

「受付嬢ですから」


俺達は笑い合う。


夜も更けて、俺は少しウトウトしてきた。


「……流石にお疲れですか。子供がこんな夜遅くまで起きているのはあまりよろしくないですね」

「あはは……大丈夫だよ。それに……15歳だから、子供じゃないし……」

「私から見たら子供です。

……仕方ないですね。今日の私の勤務時間は終わりです。

ここで寝られても困るので、とりあえず、貴方を私の家まで連れて行きます」

「そ、そんな……悪いですよ……」

「お姉さんの言うことは聞くものですよ?」

「わ、分かりました……」


アルマスさんの家に行くことになったけど、いいのか、悪いのか……。

いや、絶対に悪いんだけど、ご好意を無下にするのは良くないからね。そう。そうだ。


アルマスさんの家に着いて、寝る部屋を案内された。


「……では、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


俺はすぐに寝てしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界を鍛冶師で無双する うさぎのしゅごしん @USAGI_NO_SYUGOSHIN

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ