第3話

 夜、眠りにつく前の、ほんのちょっとした時間。


 その時間はいつも、その日に起こった事や反省点を思い出して、出来の悪い自分を叱咤したりして過ごしているのだが、今日は違っていた。


 シェリーの事、いや、シェリーと自分の間にある、あまりにも大きすぎる差を自覚して、その事実に打ちひしがれていた。


 歳も、精神性も、頭の良さも、才能も、全てがシェリーには敵わない。

 

 ……いいや、違う。


 それとは別に、もっと、どうしようもない、僕がどれだけ努力しても覆る事のない決定的な違いがあった。


 それは、僕に“祝福”があるか否かだ。


 もし、僕に祝福があったらのなら、こうも卑屈にならずに、絶望せずに済んだのだろうか。


 ひたむきに努力して、未来に希望を持つことができたのだろうか。


 分からない。


 元々持っていないものだし、これから先も得られる事がないものだから、もしそれがあったらを考えても、それは願望に過ぎなくて、想像の域を超える事は出来なかった。


 でも、それでも。


 もし、僕に“祝福”があったらと、そう思い、願う事はやめられなかった。


“祝福”がない事で、どれだけ僕が嫌な思いをしてきたか。


 だからこそ、“祝福”に対しての思いは強くなり、“祝福”がない事に対するコンプレックスは大きくなる。


 胸元からロザリオを取り出し、額の前に掲げる。


 このロザリオは、僕が十歳になる時に、お祝いとしてシェリーからプレゼントされたものだ。


 神に祈りをささげる時、僕は必ずこのロザリオを額の前に掲げる。


 だから、今日もいつものように、ロザリオを掲げて目を瞑り、天に祈りを捧げた。




 あぁ、神様。


  もし、それが叶うのであれば、僕はどんな苦労でも受け入れます。


 あぁ、だから、神様。


 どうか、どうか……




 どうか、僕に祝福をください。




 そう、何度も何度も意味のない祈りを捧げながら、僕は眠りについた。

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