第2話 あれ?この声は…
「ブブッ、ブブッ、ブブッ」
ううん、なんだ?携帯のバイブ音がうるさくて僕は目を覚ました。
そんな通知がくるような日ではなかったと思うけど。眠い目を擦りながら、携帯を開くと、僕は衝撃の文字を発見した。
『声優の水流凪さん死去。心不全』
僕は見た瞬間に眠気など遥か彼方に吹き飛び、逆にこれは夢なのではないかとさえ思った。
え?なにこれ、そんなわけないじゃん。だって昨日アニメで聴いたのに。
しかも、SNSだって動いてたし。昨日も夜ご飯がチキンだったとか楽しいこと呟いてたし。
心臓の音がうるさい。大丈夫だって、そんなわけないでしょ。
SNS、ウェブサイト、ニュースサイト…さまざまなものをみて情報を集める。
調べ終わり、僕は息をつく。
これだけ調べてわかったこと、それは彼の死は事実だと言うこと。
そんな…
僕はショックで息ができなくなった。
もう生きる気力も無くなってしまった。
確かに、水流さんは若いわけではなく、今年57歳だったはず。それに、何回か病気をしていて、治療も行っていたはずだ。
だから、仕事もセーブ気味で今回のアニメは久しぶりの主役だった。
だけど、だけど、まだまだ元気だと思っていた。まだ50代だし、病気したって言っても結局は大丈夫でしょって、昨日までは元気だったし。
そう考えれば考えるほど、彼の死が現実味を帯びてきて、僕はベッドから出ることすらできなくなってしまった。
そして、僕はその日から学校へ行けなくなってしまった。
彼がいなくても世界は回り始め、社会は動き出していく。それはアニメ界でもそうで、同様の隠せなかったアニメ界も徐々に落ち着きを取り戻し、アニメの代役も決まっていった。
しかし、僕の人生は彼がいなければ回らず、どれだけ頑張ろう、踏み出そうと思っても力が出ず、声も出すことはできなかった。
三日三晩泣き通し、泣きつかれ寝る。起きるとまた、彼がいない現実を突きつけられ泣き、寝る。
彼がいなくても、僕の頭の中では彼の低くも高くもない耳心地の良い声、聴くだけで幸せになれる声が絶えず流れていた。
アニメの名言、彼自身の言葉、ナレーションの興奮した声…。全てが思い出され、思い出すたびに目から涙が溢れて止まらなかった。
気づけば彼が亡くなってから、1週間が経っていた。
「ねぇ、そろそろ学校に行かんと勉強に追いつけなくなるよ。悲しいのはわかるけど」
彼が亡くなり1週間が経ち、僕が学校に行けなくなってから1週間となると、さすがに母親が僕を学校に行かせようと声をかけてきた。
家族も僕が彼を好きなこと、僕が彼を好きになったことで学校に行けるようになっていたこと、彼が死んだことで僕が死ぬほど悲しいことはわかっていた。
だか、意を決して部屋に入ってきたのだろう。
僕が凹んでいても彼は生き返らないし、僕の人生もあるから。
それは後から考えればわかることだが、その時には全く理解できないことであった。
「ねぇってば、わかってんの?」
と母親が僕を揺さぶる。なんだ、なぜみんな彼がいなくても生活することができるんだ。僕には彼がいない世界なんて信じられない。
彼がいない世界で学校に行くとか行かないとかどうでもいいことなんだ。
「ほらねぇ!」
なんだよ、もう!
「うるさい!」
僕は何年振りかに、家族の前でそれも大きな声を張り上げ、声を出した。
ってあれ?なんか今の声…ん?
「あ、あ、あーーーー」
僕はさっきの自分の声に違和感を抱き、何度も声を発してみる。
あれ?自分の声にってこんなのだったっけ?
っていうか、この声って、、
水流さんの声に似てない?
声にコンプレックスしかなかった僕がある日推しに激似の声を手に入れ、とりあえずネット配信してみた ナガレカワ @naga_rekawa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。声にコンプレックスしかなかった僕がある日推しに激似の声を手に入れ、とりあえずネット配信してみたの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます