仲直りしたい......じゃねーよ!
デートした日から数日が経った。
教室の窓から、校舎を眺めた。
雨が降り、男子はサッカーが中止されることに不満を漏らす。
そんなことは気にも留めず、私はただぼーっとその場にいた。
昼休み屋上や校舎裏に訪れたが、志波はいない。
仕方なく屋上で焼きそばパンをかじった。
雨に濡れようが関係なく、そうしていた。
舞や香菜とも、連絡をとっていない。
ここに来る途中、廊下ですれ違ったけど顔を反らした。
私は初めて、孤独というものはこういうものなのかと痛感した。
はぁ、放課後あいつのクラス前通ってみるか。
何か情報が手に入るかもしれない。
てか、別にあいつがどうなろうと関係ないだろ?
なんでこんなに、私は志波が気になるんだろう。
「ゲーセン行こうぜ」
放課後のチャイムが鳴ってすぐ、私は校舎の一階まで降った。
男子たちの話し声が大きく、少し耳障りだ。
若干鋭い目つきをしてしまったせいか、下級生をビビらせた。
いけない、こんな態度だから志波も離れたんじゃないか。
私は微笑むように笑いかけた。
しかしそれも気色が悪いのか、周囲から人が遠ざかる。
どうすりゃいいんだってもう。
私は誰もいない教室に入り、ドアに耳を当てて盗み聞くことにした。
すると、志波の話っぽい噂声が耳に入る。
「そういえば、あいつ最近休んでいるよな」
「あー、あのぼっちの奴な。それがどうしたの?」
「いや、あいつが秋葉でギャルと歩いてるの見たってやつがいてさ」
「マジで? いやーあり得ないだろ。1人でブツブツ呟いて気持ち悪いし、この前なんか蟻踏みつぶして笑ってたしな。あんな犯罪者予備軍なんか、誰も近寄ろうとしないって」
「それもそうだな」
あいつ、やっぱりクラスで浮いてたんだな。
それもそうか、私も最初は関わりたくなかったし。
でも志波の奴、寂しかったんだろうな。
私が屋上で1人ごはん食べている時のような気分が、ずっとあったんだきっと。
そんな日々が続いたら、あんな風に暴走しちゃうんだ。
志波のこと、何も知らなかった。
私はただ馬鹿にして、嘲笑って、何しているんだろうほんと。
私は何気なく女子トイレに入り、腰を下ろした。
この狭い個室にいると、より孤独な気持ちになる。
あぁ、なんていって志波と仲直りすればいいんだ?
普通に謝って、許してもらえるのだろうか。
金をせびって、陰で悪口いっていたんだ。
事情を話したらますます遠ざかるに決まっている。
でも、このまま偽物の自分を押し通して彼と話すのは間違えていると思う。
「うーわ、湿気で化粧崩れた」
頭を抱えていると、扉越しに聞き馴染みのある2人の女の声が聞こえた。
この声は十中八九、舞と香菜だ。
まずい時に居合わせたな。
今出るのは気まずいから、あいつらが出ていくまで待つか。
そうしていると、またしても会話を盗み聞くこととなった。
「てかさ、響子とどうなったの?」
「うーん、まぁ私も言い過ぎたかなって思っているけどなんとも言えないね」
「まぁもう少ししたら、なんか食べに行こうよ3人でさ。金ずる捕まえて」
香菜、舞が反省仕掛けているのに余計な一言を言いやがる。
またくすぐりの刑に処してわからせるしかないか?
口出ししたくなるような会話に、私はぐっと拳を抑えた。
「えーでも、中学の金ずるじゃ危ないからなぁ」
「危ないって?」
「隣の高校行った麻紀っていたじゃん。あいつが元金ずるの誰かに襲われかけたんだってさ」
「こわっ!」
「私たちも相当恨み買っているし、会わない方がいいと思う」
「そうだね。じゃーイケメンの優しい男でもゲットするかぁ! 彼氏そろそろ欲しいし!」
「そういえば、明日バレンタインだ」
「忘れてた! 私女子力皆無で悲しい」
2人は何気ない会話を終え、だんだんと話声が遠ざかっていった。
ひっそりと扉を開け、周囲を確認。
誰もいないのに安堵した私は、洗面台の前にある鏡を見つめた。
そうか、明日はバレンタインデーなんだ。
ふとそう気づくと、自分の顔が赤面していった。
何故なら、私がとんでもないお花畑な思考回路をしてしまったからだ。
チョコ上げたら許してくれるかな?
とか思ってしまったのだ。
うー、私ってもしかしてすごいガキ臭い恋愛脳なのかもしれない。
恋愛脳?
いや、私は別に志波のことなんて......好きじゃ。
......とにかく、チョコ渡すって別に悪い機会じゃないよね。
謝っても許してもらえるかわからないならせめて、喜ばせたい。
となれば、ただチョコを上げるだけではダメか?
あいつが好きなもの......うーん。
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