第3話 ヒパティア

 水から出たら死んでしまう生き物。


 美園ちゃんはメダカであるしそれ以外に例えるとしても箱の中で一生を終える生き物ならば虫籠の中の揚羽蝶や小屋のうさぎでも変わらない。あの子のような人は世界中にいると思う。

 つまり、人間はいくつかの物事に目を瞑って耳を塞いでいたわけでそれはこれからも続いていくということだ。けれどもそういうことは話しても始まらない、なにも始まらない。

 キスのあと私のパパになってくれるのねとあの子が言ったから私はそうだよと返した。

 そうだよ、なんでもいいよパパでもママでも。

 家族となにかあることはクラスが同じだったことがあるから知っていたけれどそれは私の想像上のことで実行に移さなければ全て妄想の域を出ないものだった。

 キスは検証の意味があっただろう。

 美園ちゃんはとてもかわいい思考の持ち主のようだ。


 うさぎ小屋って臭いでしょ、動物のにおい。動物園も臭いと思うでしょ。こういうの顔に出さないだけで普通にしてる人でもみんな嫌いなんだよ。堪え性のない人が言葉にするんだ。

 美園ちゃんペット飼ってる?そう犬飼ってるの、でもそれ臭いって思う?多分君は嫌だと思うときが年々少なくなっているんじゃないかな。

 うさぎ小屋って臭いんだ。


 私には新しいメダカが与えられたが、背びれを確認したところメスだった。

 女の子にアルキメデスとは名付けられないな。

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