5

アピールしてるのに……。

「須美寿のアホ!」

「えぇー行きなりなに?」

なんかしょぼんとしてる。

「頭なら俺の方が」

「そう猫みたいに怒るなって。」

そういいながら私の頭をポンポンから撫でてくる。

全く人の気も知らないで呑気な奴。

何でこんなやつのこと好きになったんだろうな。

「よしよーし。」

「ってホントに猫扱いすんなぁー!」

私は手を払いのける。

「ぷっははは。」

「笑うなぁー!」

もう笑うなんてひどいやつ。

「悪かったよ。ムスっとした顔が面白くて。」

不満が顔に出ていたのだろう。

「いや余計ひどいわ!」

私は須美寿に向かって殴りかかる。

「痛い 痛いって。」

私の拳は須美寿の体に当たっているが非力なせいで笑いながら受け止められている。

「もういい!」

私は教室へ向かう。

「ちょっと待って!」

須美寿があわてて追いかける。

なんか良くみる流れ 安心する流れだ。

「で?そのラブレターの返事どうすんの?」

珍しいことに須美寿が聞いてきた。

「なにを急に。」

「いや、いつももらってる割に誰とも付き合わないじゃん?」

うーん、理由になってるような なってないような。

「別に…。」

言いかけて私は良いアイデアを思いついた。

そうだ、仕返ししてやる。

「いややっぱりどうしようかなぁー。」

「えっ?」

須美寿が動揺している。

「さすがの私も彼氏の一人や二人欲しいと思うようになってきてさぁー 良い人そうだったら付き合ってもいいかもって。」

嘘である。私は須美寿としか恋人になりたくない。

「そ そうか。」

須美寿の目が明らかに泳いでる。めちゃくちゃ動揺している証拠だ。

そうだ そのまま動揺してればいいさ。

焦ればいいさ。

そして私にさっさと告白してくればいいさ。

目論見が成功して私は笑みを浮かべる。

須美寿から見たら本当のように感じるはずだ。

きっと私と須美寿は両想いだ。

でも私は告白出来ない。

私は物語のお姫様じゃなくてヒロインになりたい。

だから彼から告白してくるように私はアピールをするだけなんだ。

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アピールすることしか出来ないから 織青 叶 @AMANOSUI

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