彼女にそのことを伝えると安堵の表情を浮かべました。しかし一度恐怖を覚えてしまうとそれを拭い去ることは難しいのでしょう。彼女は朝までこの部屋で過ごしたい、一人になりたくないと訴えます。涙を浮かべながらそういう彼女を一人にするのは気が引けます。なので、彼女の要求通り一緒に過ごすことにしました。しかし寝具を共にするわけには行かないので、私は部屋にある一人がけのソファで眠ることにしました。

 いくらか時間が経ち、彼女の寝息が聞こえてきます。私もうとうととしながら、彼女の部屋の鍵を掛け忘れたことを思い出しました。鍵を締めに出ようか、と思った時、ふと生暖かい風が耳元を過ぎました。気味の悪さに眠気も吹き飛んだ私の耳元にもう一度生暖かい風が吹きます。

 

 本能がそう感じました。恐怖に慄く中私は、が近寄るのを感じました。何かは私の耳元で女の、しかし爛れたような声でこう呟いたのです。

「やっと入れた」

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窓から呼ぶ音 裕理 @favo_ured

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