第3話 能力の紹介
「そうそう、ふたりはどんな能力持っているの?」
思い出したように楓が訊いた。
「わかって誘ったんじゃないんですか?」
「いんや、前の会長が卒業する時に、『この子ら能力者だから誘ってあげるといいよ、気が向いたら来てくれるだろうから』って言われてたの思い出した」
綾花の問いには福寿が答えた。
「確かに海咲なら気が向いたらって言いそう」
「OKしてくれたってことは気が向いたってことだな、良かった」
綾花と福寿の言葉に、
「まあ、否定はしない」
海咲はそう答えた。
「話を戻すわね。ちなみに、私は治癒の能力よ。ちょっとした怪我くらいなら任せてね」
楓が言った。
「紫苑が幻覚、水樹が瞬間移動、藤乃が浮遊だな」
そして福寿がまとめて続けた。
「会長さんは?」
「…………」
綾花が訊くと、福寿は黙った。
「福寿は念力よ」
黙った福寿に変わり、楓が答えた。
「集中してちょっとしか動かせないから気にしてるのよ」
「ちょ、余計なことまで言わんでいい!」
「それで、2人の能力は?良かったら教えてくれない?」
その質問には綾花から答えた。
「私は無効化です。主に対能力者だから、今まではあまり使ってないんですけど」
「無効化?」
楓が訊いた。
「うーん、説明が難しいな……。あ、そうだ。紫苑くん幻覚だったよね。私に使ってみて」
綾花は少し考えて、紫苑に声をかけた。
「分かりました」
紫苑はそう答え、能力を発動させた。
すかさずそれを無効化した綾花は、
「……なんで筋トレ始めたんです?」
突然目の前でスクワットを始めた福寿を見てそう言った。
「お、ほんとに見えてるんだな。紫苑の能力、結構強いのに」
「福寿とは違ってね」
感心する福寿に、間髪入れず楓が言った。
「無効化された側ってこんな感じなんですね」
「無効化されるだけならいいけど、返される場合もあるよ」
海咲が補足した。
「返される、というと」
「そのままの意味。相手に使おうとした能力が自分にかかる。今回の場合だと、多分ブラックアウトさせるつもりだったのかな、それが紫苑くんにいくことになる」
「そんなことが……」
「なあ、話遮ってすまん。ちょっと訊きたい事があるんだが」
「なんでしょう?」
と、福寿が割り込み綾花が答えた。
「紫苑の能力無効化できるんなら、さっきの屋上の時も出来たんじゃないか?」
「まあ、それは、やろうと思えば出来たと思います」
綾花は少し言いにくそうに、海咲を見た。
「じゃあどうして……」
「それはぼくが止めたから」
視線を受けた海咲はそう答えた。
「理由を訊いても?」
「意図は察せたし、敵意や害意も感じなかった。それに、」
海咲は言いかけ、水樹と視線が合った。
「それに?」
「いや、なんでもない」
そう問いかけを流した。
「じゃあ海咲ちゃんはどうなの?」
話を切り替えるように、楓が言った。
海咲はその問いに答えるのに少し考える素振りを見せた。
「……幻武」
そうぽつりと答えたが、それを聞いた面々には疑問符が浮かんでいた。
「説明が面倒なんだけど、見てもらったほうが早いかもしれない」
海咲はそう続けると、つい今まで何も持っていなかった手に短刀を握った。
「こんな感じ」
「というと?」
「何もない所から幻の武装を具現化させる。これは単なる短刀だけど、イメージさえ出来たら割と制限なしになんでも作れる。
幻のっていっても具現化させているから実体もあるし、これもそこそこに切れ味はあるよ」
福寿の疑問にそう答え、短刀を消した。
「そこそこって海咲は言ってますけど、皆さんが言ってた魔物ってやつは簡単に斬り裂けるくらいの結構やばい切れ味ですよ」
そして綾花がそう補足した。
「あとは、おいおい」
海咲がそう言い、ひとまずの能力紹介が終わった。
生徒会の能力者達 美川彼方 @kanata_322
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