第2話 断る理由はない
「水樹!!なんでオレを置いていったんだ!!」
勢いよく扉を開け、駆け込んできた福寿は開口一番そう叫んだ。ここまで走ってきたようで、かなり息が荒れていた。
「すみません、僕が一度に運べるのって自分含めて5人までなんですよ。知ってるでしょう?」
水樹が答える。
「知ってるよ!それでなんでオレが置いてかれるんだよ!」
「考えてみてくださいよ……」
勢いよく訊く福寿に、水樹は呆れたように答える。
「えっと、水樹と藤だろ。幻覚使ってる紫苑だろ。で連れてく2人で……。なんだ、それで枠埋まるのか……」
「ま、いいや。話戻すぞ。海咲に綾花、生徒会に入れ」
福寿は落ち込んだ様子を一瞬みせたが、すぐに切りかえて2人に話しかけた。
「屋上でも言ったけれど、何故?ここにいるのは全員能力者みたいだけれど、ぼく達が能力者だってこと以外に理由あるの?」
海咲のその発言に、全員息を呑んだ。
「全員?」
「うん、ここにいるのはみんな能力者だよ」
綾花に海咲が答えた。
「まてまて、なんで使ってた2人はともかく全員って知ってんだよ」
「見ればわかるよ、それくらい」
慌てて訊く福寿に、海咲はなんでもないことのように答えた。
「…………。まあいい、そこが分かってるんなら話は速い」
一旦言葉を切った福寿に、楓が続けた。
「この生徒会は、代々能力者が務めているの。だからまあ、スカウトの理由は能力者だからってだけなのだけど。生徒会の活動内容的に、能力者じゃないと務まらないのよね」
「能力者じゃないと務まらない?」
「そう、生徒会の主な業務は魔物退治だから」
綾花の質問に楓が答えた。
「だから少なくとも視えないとダメだ、と。能力者以外にはほとんど視える人はいないから」
そして海咲がその言葉を続けた。
「そ、そこまで分かってて……」
「それで、ぼく達が入ったとして。戦力としての頭数が欲しいっていうなら、それに見合うメリットを提示して欲しいのだけど」
福寿が言いかけた言葉に海咲が被せた。
「『生徒会活動』って言うだけで授業免除にできること、あとは学校生活において色々融通がきくってことくらいかしら。
…………特に海咲さんは欠席早退が多いし得だとは思うけれど」
「欠席が多くてもいい、と?」
「ある程度なら。こちらの活動も毎日ある訳ではないし」
「それは少し、助かるかも。……綾花はどう思う?」
海咲は少し考えて、綾花に訊いた。
「私はどちらでも構わないよ。海咲に任せる」
「じゃあ成立、ってことで」
「いいのか!?」
福寿が急に要求が通ったことに驚いて言う。
「断る理由を特に思いつかなかったっていうのと、どうせ魔物倒すならメリット貰った方が得かなって、それだけですよ」
「どうせ倒すなら?」
「ああ、なんか邪魔なのがいたって斬り捨ててたのって」
「それの事じゃないかな、話的に」
「待って?魔物、倒したの?」
軽く流される会話に楓が割り込んだ。
「何度かは」
「出現反応があって、行ったけど居なかったってのが何回かあったがもしかしてそれは。ちなみに直近だといつだ?」
「昨日の昼過ぎ、保健室付近」
福寿が訊いて、海咲が即答した。
「確かに、その時間一瞬だったけれど反応があったわね。すぐに消えたから警報の調子が悪いのかと。
訊いてもいい?その時どれくらいかかったの?」
「測ってないし正確には分からないけれど、1分前後くらいだったかと思います。ちなみに訊かれそうなので先に言いますけど海咲ひとりで」
楓の質問には綾花が答えた。
「はっや。
先輩たちは速くても5分以上はかかってたのに。数人がかりで平均10分程度だったかな」
「能力のタイプによって殲滅力は変わりますし」
驚く福寿に、海咲はなんでもないように答えた。
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