愛娘

@grrrrr

愛娘


 私は一度、人を殺した方が良いみたいです。

 それが、私の為になりそうなのです。

 ここで誤解を解いておくと、それは快楽けらくでも、驕慢でもありません。

 強いて言うなら、戒めです。

 私は私を戒める為に、人を殺した方が良いみたいです。

 れば、救われる? はて。はて。


 駄目でしょうか?――まあ、駄目でしょう。

 どうしましょうか?――うん、どうしましょう。

 創りますか?――何を? 人間を。

 いっそ、父親にでもなろうかしらん。


 しかし、私は女性が嫌いなのです。就中、母親は、こわい。

 ――なあに、父親にならだけで成れる。


 しかし、私は男性が嫌いなのです。就中、父親は、厭です。

 ――なあに、ならばを創ればいい。

 ――お前がデカルトに成ればいい。


 ならば娘を創ればいい? デカルト? 私は何を言っているのでしょう。デカルトが何をしたというのです。やはり、人を殺した方が・・・・・・


 その時でした。私は、こんな声を聞きました。


 ――見ろ。そので。

 ――見ろ。そので以て。刮目するといい。

 ――そこに居るのは、お前の愛するたちだ。

 ――そこに居るのは――切り取られた、お前のたちだ。

 ――神に貼り付いた、お前の母体だ。


 ああ、と私は泣き出しました。ああ、ああ、ああ、と。

 私はずぅっと昔から、父親だったのです。

 そうだ、何でこんなに大切なこと、忘れていたのでしょう。

 私には娘がいたのです。昔から。大切な、大切な愛娘が。


 ――見ろ。そので。

 ――見ろ。そので以て。刮目するといい。

 ――そこに居るのは、お前の愛するたちだ。


 見なければ。私の愛娘を、見なければ。

 ほら。ほら。そこに、そこに・・・・・・

 

 ――そこに居るのは――切り取られた、お前のたちだ。

 ――神に貼り付いた、お前の母体だ。



 愛娘のおかげで、今日は人を殺さずに済みそうです。一笑。

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