第5話 俺の名前は篠原優、どこにでもいる平凡な高校生だ。

俺の名前は篠原優、どこにでもいる平凡な高校生だ。


だから今日も凡人らしく平凡な日常を送る。


だが、平凡な日常にも微かな楽しみを必ず一つは見出す。


学校までの通り道にあるカフェに朝早く起きて行ってみたり、野良猫を尾行してみたり、新作のライトノベルを読んだり、数多く楽しみがある。

もちろん夜更かししてやる楽しみもある。


だから授業中の、特に昼が終わった直後の授業の寝不足によるうたた寝も必然と増える。


学校ではどこにでも偶にいる不真面目な生徒として認定されているはずだ。

だから先生からの評価は低く、生徒からの信頼もあったもんじゃない。されども嫌悪を抱かれることはないので平凡な不真面目野郎として、流れる日常の中に溶け込んでいる。

だが、そんな俺の悪習を許さない唯一の非日常がいる。


「ちょっと……ダメだよ授業中に寝たら。」

「すまん」

「また夜更かししたの?昨日の夜も部屋の明かりついてたし。」


隣の席から不満の声を漏らし注意を促すのはこちら、身体的特徴が美少女であり優等生で、学校で人気者な七瀬芽衣。

俺とは家が小さい頃から隣同士で、幼稚園より前からの幼馴染だ。

だから夜更かししたのだってすぐばれる。

まったく困ったものだ。


「もぉ、テスト期間の時に泣いても知らないからね?」

「でぇじょうぶだ。平均点は超える」

「志低いなぁ、もう……」

「いいんだよ、無事に学校生活が滞りなく送れてれば。それに平均点超えるって凄い事なんだぞ?知らないのか、中間テスト上位の優等生さん?」

「はいはい凄い凄い」

「うむ、わかれば良いのだ」

「軽くあしらったつもりなんだけど、それにも気付かないなんて。私は優ちゃんの将来が心配で心配で」


心配する素振りを見せながらも授業はしっかり聞いてペンをノートに走らせているあたりさすがに抜かりない。俺はそんな様子を横目に見ながらぼーっとする。


俺は友達が少ない、だからもちろん異性と話す経験も齢十七まで薄く、仮に話せたとしてもたどたどしい様子で話し、対して上手くもない相槌をうちながら気まずくなるのがよくあるオチだ。

だからこうして緊張しないで話せる異性は幼馴染である七瀬ぐらいしかいない。

放課後に一緒にどっか寄り道したり出来るのだってそうだ。


「……さっきからどうしたのそんなに私の事見つめて」

さすがに見すぎたのかペンを止め耐えかねた様子で声をかけてきた。

「いや、なんでも」

「そう」


向こうも何も気を遣っていない様子でそっけなく返事を返す。

それが、そんな関係が俺はとても心地よく感じる。

だから七瀬とは今後も一緒にいられたらと思う。

「……なぁ、放課後さ、この間出来たばかりの喫茶店いかね?」

いつも俺が唐突に行きたい場所を提示し、二つ返事でいいよと七瀬から返事が来るのがいつものお決まりだ

だが、今回はいつもとは違うみたいだ。

「ああ、そういえばアンタに言ってなかったけど」

「?どうした」

「アタシこの間から三組の早瀬君と付き合うことになったから、これからは放課後一緒に遊んだりどっか寄り道したり出来ない、ごめん」

「……あ、ああ、そうか。……悪いないつも誘いに付き合わせて。そうか、彼氏できたんだな、そうか、彼氏できたらしょうがないな」

「うん、ごめんね」

「いや、何で謝るんだよ。めでたい事じゃん、おめでとう幸せに…な?」

「……うん、ありがとう」


どうやら俺の非日常の象徴は幻で、俺の幼馴染は美少女ヒロインなのではなく、見た目が秀でている普通の人間な美少女だったらしい。

そりゃあ恋もする。

まぁ幼馴染は親戚と同じ類になって恋愛感情抱きにくいっていうし、恋人になるだけが七瀬との関わり方なんて事はない。

なんて事はないが、これからは気軽に…いや、もう遊びに誘えないのが寂しく思う。

心の中でため息をついて、いつの間にか眠気も冷めたので真面目に授業を聴く姿勢をとり、要点だけしか書いていないノートを開いて板書を開始する。

動揺をごまかすように、それはもう過去一の集中力で授業を聞いた。


「………そういう所だったんだよ」


だから隣で呟きにも満たない彼女の不満の独白にも当然その耳には届かない。








なんか前の席で一つのラブコメが終わった気がするが、大丈夫だろうか篠原君。


神崎は、長い年月のぼっちによって得られた観察力と聴力をもって授業に集中していてもつい無意識に盗み聞きをしていた。


前まではその美少女、ひいては過去に好きだった人との会話をなんの躊躇いもなく毎回して七瀬さんと幼馴染かなんかで仲良さげだったので内心には雨が降っていたが、今回おそらくだが篠原君は只今失恋絶賛中なのでそれどころじゃなく心配の気持ちが強い。

いや、他人なんだから心配もなにもないけど。


「……どうしたの?」

「……え?いやぁ……お腹空いたなって……」

「ふふっ……さっきご飯食べたばっかりなのに、意外と食いしん坊なんだね」

「あはは…」

二条さんはやけに僕に親しく接してくれるし、そんな人と話している所見たことないけど、もしかして僕の偏見だったのかな。


まぁともかく、今後に篠原君と何か関わる事があったらジュースでも何でも奢ったりするなりして優しくしてあげよう。








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陰キャ高校生の青春 不人気者 @rosuta

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