第12話 不可思議な現象

「早くに来すぎたかな」


 夏休みのある日、生徒会の集まりが午後からあったのだか、私は普段通り朝から学校に来ていた。午前は部活、午後が生徒会の用事となっているため、他のメンバーは現在部活動中。私?私は幽霊部員で部活に出ない人なので、午後に登校でも問題なし。けれどまぁ、前回やらかした事も踏まえて、午前から登校しました。はい。

 っとまぁ、やることは決まってる。まずは掃除と備品整理。……三十分ほど経っただろう。掃除と備品整理が終わった。


「さて、最低限のお仕事はしたから読書するか」


 私はラノベを取り出し読み始める。これで午後まで時間をつぶせる。



         ◇◆◇◆◇



「はぁ~面白かった♪」


 夢中で読み進めて、持って来ていた四冊のうち二冊を読み終わった。ちなみに持って来ていたのは、二冊は青春ラブコメの続き物、残りがVRMMOが舞台の続き物。読み終わったのは青春ラブコメの方。


「やっぱりこの作者さんの作品、好きだなぁ」

「あれ、つーくん?」


 天音あまねが生徒会室へやって来た。時計を確かめると、時間は丁度お昼時。おそらく部活動が終わってから来たのだろう。


「やぁ、おはよう」

「おはよう……ってつーくん、図書室に行ったんじゃないの?」

「図書室?いや行って無いが?」


 と言うか朝に学校に来てから、生徒会室から出ていない。


「えっ?でも確かにつーくんと、図書室へ向かう途中の渡り廊下で、会って話したんだけど」

「いやいや、そう言われても自分は学校来てからは、ずっと生徒会室に居たぞ?」

「え~でもなぁ……あれは確かにつーくんだったしなぁ」

「自分が二人居たってか?あり得んだろ?」

「そうなんだけど……」


 この感じ、天音がウソを言ってる感じでもない。ん~……目撃者が居るかもしれないし、今から図書室に行ってみるか。


「取り敢えず今から、図書室行ってみるか」

「うん。そうしよう!」


 私は天音と一緒に、生徒会室から図書室へ移動する。この学校の図書室は、校舎と別にある離れの建物。なので途中の渡り廊下を必ず通ることになるのだが……。

 天音の話によると、天音はその渡り廊下で音出し練習をしていて、その時に私が現れたらしい。挨拶して図書室で時間をつぶして待っている、みたいな話をしたそうだ。その後、天音が練習を切り上げて移動するまでの間に、図書室から出てきていないので、図書室に居ると思っていたらしい。


 図書室へ到着した。夏休み中は自習室として解放されており、中を見回すが特別変な感じはしない。


「あれ、つむぎ?何か忘れ物でもしたの?」


 カウンターに座っていた古詠こよみさんが、私たちに気付き声を掛けて来た。けど、何か妙な質問だな?


「いや何も?と言うか、今日は初めて図書室に来たんだけど?」

「え?でもついさっき、そろそろ生徒会室へ行くわ、って言って出ていったばっかりじゃん」

「ねぇちゆ。つーくん、さっきまで居たの?」

「そう言ってるでしょ?」

「そっか、そっか……いやいや、どういう事!?」

「さぁ?ドッペルゲンガーにでも会ったんじゃない?」

「……話が見えてこないのだけど?」

「実はね……」


 天音が古詠さんに事情を説明する。

 その間に私はと言うと……ラノベの話みたいだなぁって思っていたりする。不可思議現象ではあるが……まぁ、そう言うこともあるのだろ。この世は不思議がいっぱいあるから。



 その後、天音と古詠さんと時間の許す限り、探し回るも手がかり無し。謎のまま終わることとなった。

 ……もう一人の自分が存在したと仮定して、一体何をしていたんだろ?冷静になってくると少しこわ。

 ラノベの様な話は、物語の中だけ充分だな。

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