第13話 夏祭り
「ごめんなさい、待った?」
「ん?多分そんなに待ってないよ?」
どのくらい待ったのかな?持参していたラノベを読んでいたから、待ち時間はあまり気にしてなかったなぁ。
「そう?それじゃ行きましょうか」
「花火まで時間があるし、屋台を見て回ろっか?」
「古詠さんの好きなようにどうぞ。私は特に無いから、古詠さんに着いていくよ」
「キミが誘ったのに、それは変じゃないかな?」
「んー、けど特に目的があるわけじゃないからなぁ……」
と言っても、古詠さんの言うことにも一理ある。結果的にだが誘ったのは私。なら……どうする?……とりあえず歩き回って、観察すれば道は開けるかな。
「取り敢えず見て回ろうよ?回っていれば何かあるかもだし」
「ふぅ。ま、興味ないって言ってたキミに期待しても、無理があるかぁ」
「期待って、何の?」
「ぇ、っと……エスコート?」
祭りでエスコートともなにも無いと思うのだけど……まぁいいか。
「それなら、はぐれないように手でも繋ぎましょうか?お嬢様」
「っ!え、えぇ、行きましょう」
◇◆◇◆◇
古詠さんと手を繋ぎお祭りを回っていく。道中古詠さんは、かき氷を買ったり焼きそばを買って食べるのだが、支払いは私持ち。……いやまぁ、私から誘ったし、別に良いのだけど。なんと言うか、使用人感がすごい。
挙句の果てには、はしまきを買って食べていたが1/4ほど食べてお腹いっぱいだからあげるとわたされた。……これって間接キスに入る?いやいや、向こうが気にしてない物を気にするのは、自意識過剰か?……とりあえず、もったいないし食べてしまおう。
◇◆◇◆◇
そんなこんなで腹ごしらえも済み、夕暮れで時間も丁度良い頃合いになっていた。
「それなりに屋台は楽しんだし、花火の見えるところに行くかい?」
「そうね。そうしましょう」
少し移動をし花火の観覧できる場所に来る。すると丁度花火が打ち上がり始める。しばらく無言で花火を観ていたが、古詠さんに声を掛けられる。
「つむぎ」
「ん?」
「今日はどうだった?楽しかったかな?」
「……まぁそうだな。悪くは無かったよ。自分一人じゃ経験しないようなこと、色々合ったから」
「……そう」
「古詠さんは?」
「私は……楽しかったわ。……と一緒に……て」
古詠さんが話し始めたタイミングで連続の打ち上げが始まる。……花火の音が大きくて、7割ぐらいしか聴こえないな。かといって、大きな声で喋って、って言うのは違うか。聞き逃さない様に注意せねば……。
「……よ、つむぎ」
……今、何て言った?彼女は私に何を……
「い、今なんて」
「……何の事かしら?」
「……」
「私は混む前に、先に帰らせてもらうわ。またね、つむぎ」
そう早口で伝えると古詠さんは行ってしまう。私はしばらくその場で花火が上がるのを眺める。
「……自分も帰るか」
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