第5話 庶務への相談事

「つーくん、相談があるんだけど、今いい?」

「……まぁいいけど。あんまり期待はしないでよ」


 ある日の放課後、生徒会で整理を行っていたところに美咲みさきさんがやって来た。


「つーくんなら大丈夫。信頼と実績に基づいた、相談役じゃない」

「そんなつもりはないんだけどなぁ」


 私は何故か相談事を受ける事が多い。上手い返しをしているつもりもないし、ただ話を聞いて思ったことを言っただけなのに、何故かそこそこ評判が良いらしい。まぁ、取り敢えず話を聞いてみないとな。


「で?相談って何?」

「えっとね、一年生ってもうすぐ林間学校じゃない?」

「あ~、もうすぐそんな時期だっけ」

「そうだよ。でね、後輩ちゃんたちから、スマホをどうやったら、バレずに持っていけるのかって聞かれてね~」

「それなら、自分がしたやり方を教えればいいじゃん」

「私、スマホは持って行かなかったから」

「なら、持っていかないのが一番って言えば解決でしょ?」

「個人的にはそう思うけど、だからって意見を押し付けるのは違うでしょ」

「……まぁ、そうだわな。で?結局相談って何よ」

「まぁまぁ。話を最後まで聞いてよ」

「聞いてるからはよ」

「うん。でね、後輩ちゃんたちが知りたいのはスマホがバレない方法じゃない?だから電源を切るか、マナーモードにして、滅多に出さないようにしたら、って言ったの」

「それで充分だろ。相談事ないだろ」

「相談してきた子たち、物凄く心配性で他にも何か無いかって聞いてきたのよ。だから一日くれれば、相談役にいい案無いか、聞いてくるよって言ったの」

「相談役のつもりは無いんだけど……」


 しかしなぁるほど……それで現在に至るって訳か。しっかしなぁ……そこまで心配性なら、持っていかないのが一番だろうに。まぁ、このデジタル時代にスマホ持ち込み禁止な学校の方が珍しいか。……さて。


「見付かりにくくする方法、なら無いこともない」

「おぉ!どうやるの?」

「ん~……電源とマナーモード以外なら、あと1つだけ」


 それは本で読んだ知識。実際に私もやってみて、効果があることは実証済みの方法。


「どんな方法なの?」

「スマホをアルミホイルで包むの」

「アルミホイル?」

「そ、アルミホイル。原理や詳しい理由は忘れたけど、アルミホイルがスマホの電波を遮断するらしい。つまり、スマホの機内モードと同じような働きをするわけ」

「へぇ~そうなんだ」

「あ、でもアラームとかはスマホの設定だから、たぶん防げない。だからやっぱり、持っていかないか、電源を切っておくのが一番だと思うよ」

「分かったわ。じゃあ後輩ちゃんたちにはそう伝える!ありがとね、つーくん」


 美咲さんはそう言うと、生徒会室を出て行く。取り敢えず、今日はもう切り上げて、私も帰ろう。

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