第4話 放課後、古詠ちゆと語る
ある日の放課後。生徒会も委員会の仕事も無いので、帰り支度をしていると、
「ねぇ、つむぎ。何か面白い話ない?」
「面白い話ねぇ……」
「そう。面白い話」
そんな事を言われても……面白い話ねぇ。何かあっただろうか?……あぁそう言えば。
「面白いかどうかは知らんけど」
「うん、うん。なにかな」
「たまに考えるんだけど、この世界の中心って何だろうなって」
「世界の中心かぁ」
昔言われた言葉で、世界はあんた中心で回ってる訳じゃない。その言葉を聴いてから時たま考える。なら世界の中心って何だろう、と。まぁ分かったら、どうこうするって訳でも無いけれど……
古詠は少し考えると、私はと言って話し始めた。
「心底どうでもいいと思う」
「あ、やっぱり?」
「でも強いて言うなら、私」
ほう……古詠は、自分派って事かな?
「より正確に言うと、私が見て体験する事。私の見える世界の出来事。その中心は……って感じかな」
「なるほどねぇ。言われてみればそうか……」
「そうね。キミの好きなラノベ風に言うなら、私は私と言う物語の主人公。だから今見ている景色が私の世界の中心」
どうやら私の考え方が固かったようだ。私の見えている範囲、体験する事は確かに私の出来事。私の世界に違いない。
そう考えていくとやはり。
「心底どうでもいい、考え事だったわけだ」
「そう。そんな事で悩んでも時間の無駄よ。私たちの過ごす時間に待ったは無い」
「限りある日々だからいとおしい、ってか?」
「そうね。じゃあ初めに戻って、何か私を楽しませて♪」
……私は帰りたいんだけど、どうやら解放して貰えないようだ。どうやら満足行く話では無かったようだ。……ってそりゃそうか。ご所望は面白い話だ。仕方がない、お嬢様が満足するまで話すか。
「今、失礼な事考えなかった?」
「そんなこと無いよ……」
「目を逸らしてるよ!?キミ、そこそこ顔に出やすいタイプだねぇ」
「わるぅございました」
で、楽しませろかぁ……。あれ、そう言えば。
「古詠、部活はどうしたの?」
古詠は軽音部に入部してドラムを担当していた。部活動幽霊部員な私と違ってきちんと部活へ参加していたはず。
「聞いてくれる?美音がね……」
どうやら当たりを引いたようだ。古詠さんが目を輝かせて話し出す。どうやら聞いて欲しい事があったらしい。
「ねぇ、聞いてる?」
「はい、はい。ちゃんと聞くから、ゆっくり話しな」
この後、古詠の話しは完全下校時間間際まで続いたのだった。
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