第16話 修学旅行、一日目です

 体育祭も終わり約一ヶ月後。私たち二年生は修学旅行で京都に来ていた。日程は二泊三日で初日と二日目で京都を回り、最終日は大阪にある遊園地と言うものだった。

 私の怪我?一応完治はした。けれど若干怪我をしやすくなった気がする。体育の時間で動き回っていると、膝が急にカックっとなったり、雨の日なんかは膝が少しばかり痛かったり……。雨の日に古傷が痛むって、本当にあるんだなぁ。

 それはさておき、現在は移動の新幹線の中。行動班ごとに座っているのだが、私は一人持参したラノベを読んでいた。ハブられているとかではなく、私の気分の問題で……正直言うと周りのテンションに付いていけなかった。なーんか、少しばかり体が重い気が……いや気のせいか。楽しみでは無い、と言うわけではない。無いのだが……。


「こんな時まで本、読んでるの?」

「ほっとけ」


 ちなみに、私は古詠こよみさんと同じ班だった。と言うか読書が好きなんだから別にいいでしょ?時間の潰しかたは自由でしょ。


「な~んか、今日は素っ気ないね。キミ」


 ……今日は読んでいても、あまり内容が頭に入ってこない事だし、栞を挟んで少し会話の方に参加するか。


「気のせいだろ?で、今はなにやってんの?」

「ん、トランプでババ抜きしてる。つむぎもやる?」

「じゃあやろうかな」

「OK」


 そう言うと古詠さんがグループの人たちに話をつける。そして手札が配られていく。……なんか、少しふらつくなぁ。



         ◆◇◆◇◆



 京都に到着しバスで清水寺へと移動、そしてクラス写真を撮ったのちに散策時間となった。今日は午前中を移動、午後は清水寺の見学とのみのスケジュールで、明日が本番。明日は班ごとの一日自由行動になるのだ。


「さて……見て回るか」


 特に目的もなく、歩き始める。清水寺の敷地の範囲内なら自由行動な訳だが、私は誰かと一緒に回る約束などしていないため、一人で回るつもりだった……のだが。


「あの~、古詠さん?」

「なに?」

「いや、何でついてくるの?」


 なぜか古詠さんが自分についてくる。古詠さん、友達と回らなくていいのだろうか?


「私の行くところにキミが居るだけよ」

「いや、行く先って言うか、後ろついてきてるよね」

「気のせいよ」


 ……そう言うことにしておこう。考える気力がもったいない。

 ふらふらと歩き回っては、たまに景色などを眺める。その間も古詠さんは私についてきていた。


「何か言いたいこと、あるんじゃないの?」

「……そうね。あるわ」

「聞こうか」

「午前中から様子が変だと思ってたの」

「変、ね。別に普通だけど?」

「変だと思ったから、キミについて回ったのよ」

「それで?何が変なのか分かったの?」

「……たぶんね。キミ、体調が悪いんじゃ無いの?」


 体調が悪い、か。どうだろう?いつもとあまり変わりはないように、自分では思っているのだけど。……まぁ多少疲れるのが早い気はするが。


「少し辛そうに見えるわ?」

「大丈夫、だよ。たぶん、慣れない長距離移動で、少し疲れているだけだよ」

「本当に?」


 念を押されると、自信はないが……でも、きっと気のせいだから。じゃないと、心配掛けるから。


「たぶんね。まぁ、もう集合場所へ行って休んでおくよ。だから古詠さんは、友達と合流したらいいよ」

「私もついて行くわ」

「えっ、でも」

「今からじゃ、みんなが何処にいるか分からないもの」

「スマホで居場所聞けば」

「スマホは見つかったら没収されるわよ」

「いや、だからこっそり使えば」

「つべこべ言わない。私は、私のしたいようにしているから、キミは気にしなくていいの」


 古詠さんは私の隣に立つとスマホを掲げてシャッターボタンを押す。パシャリと言う音を響かせ写真が撮られる。


「……なしていま?」

「思い出はいつ残してもいいでしょ?」


 そう言うと古詠さんは私の手を引いて歩き出す。少し恥ずかしいが、されるがままに歩き始める。


「じゃあ、行きましょうか?」


 私は古詠さんと集合場所へ向かった。道中いくつか写真を撮ったりしながら進んでいく。そして一番乗りで集合場所に到着すると、先生のチェックを受けてバスの座席に座る。

 ……ラノベを読むのもあれだし、時間が来るまで寝て待つことしよう。そう考え、私は眠りについた。


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