第15話 体育祭、当日です
「なぁーにやってんだろうなぁ」
体育祭の当日。私はテントから行進の様子を眺めていた。……捻挫してました。あの時の急な旋回に足が付いていかず、大きく捻ってしまっていたようだ。予行演習での怪我は、膝の捻挫で全治約一ヶ月と以外と重かった。そんなわけで、当日まさかの見学となってしまった。
「ほんと……なにやってんだろ」
自分以外誰もいないテントで呟きを漏らすが、それを聞く人は誰一人としていない。行進が終わり開会式が始まる。
◇◆◇◆◇
「楽しんでいるかな、つーくん?」
プログラムの1/3ほどが終わった頃、
「天音……迷惑掛けたね」
「その話はもうすんだでしょ?迷惑なんて、思ってないよ」
「まぁそうだけど……やっぱりねぇ」
罪悪感がどうしても拭えない。
「気にしいなところあるよね、つーくんって」
「そうかな?」
「そうでしょ。真面目で以外と気にしいがつーくん」
……そこそこ長い付き合いの天音が言うなら、そうなのだろう。周りの評価とかあまり気にしてないつもりだったんだけどなぁ。
「さて、私はそろそろ行くね」
「ん、頑張って」
天音を見送るとグランドの方を見る。進んでいく競技を観ながら、天音が言った言葉を反芻する。
「楽しんでいる、か……」
「一度しかないなら楽しんだ者勝ち、でしょ?」
「古詠さん?」
今度は
「天音ちゃんはよく言ってるわ。せっかくやるんだから楽しもうって」
「楽しもうねぇ」
「私もそう思うわよ?いつまでもうじうじしているより、切り替えて今を楽しむのよ」
「……まぁその方がいいのは、何となく分かる」
分かるが、どうも乗りきれない。元々運動も好きではないし、体育祭の勝ち負けにあまり拘りがないからなぁ。……あれ、もしかして原因はそこ?私自身が参加しているようで、参加していないから罪悪感とか言う、余計な事にばかり目が行くのか。なら、どうすればいいだろ?
「……じゃあ私の活躍を観てて」
「ん?」
「私を観てて。そして応援してよ」
「古詠さんを?」
「今のキミでも、応援は出来るでしょ?」
だから古詠さんの応援をする、かぁ……ちゃんと参加する一歩目としては丁度いいか。
「分かった。じゃあ、応援することにすわ」
「うん。なら私も頑張ってくるわ」
そう言って古詠さんは入場門の方へ歩いて行った。
「今を楽しむ、かぁ」
言われてみれば、大切なことだよなぁ。私だってどんなラノベを読む時だって、ワクワクと楽しみながら読んでいるもの。楽しむ気持ちがあるかないかの一つで、見える景色は大きく違って見えるんだな。そんな気付きと共に体育祭は進んでいった。
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