第8話 日陰のお仕事

「あ!しまった」


 時は昼休憩。天音あまねが突如声をあげた。

 現在生徒会では、学校の入り口近くにある掲示板へ貼り出すの作品を制作していた。今月は詩と折り紙を1/4の大きさに切り、それを貼り虹を作るといった感じの作品を作ることになっていた。

 と言うのも、この掲示板に飾る作品は大体の季節ごとに換えるものなのだが……何で生徒会こんなことをしているのだろう。普通飾るなら美術部の作品とかじゃないのか?と、まぁ疑問ではあるのだが、伝統と言う事らしい。……うん。そう言うものだと思って、深くは追求しない。


「どうしたの?天音ちゃん」


 咲耶さくやさんが天音に訊ねると、天音は机の上を指差した。全員の視線が先ほど切り終わった折り紙の山に集まる。


「切ったのはいいけど、色の違い判る?」

「え?」

「色の違い?」


 私は切られた折り紙の山をよくよく観察する。そして気づいた。この折り紙の山は、二十五色の綺麗なグラデーションの順に並んでいた。しかし、各々で適当な枚数を手に取り切ってをした後の現在は、ある程度同色でまとまり七つの山ができていた。本来であれば二十五色、二十五の山が出来ていないといけないのだ。


「違い……っ!そう言うことか」


 他の役員たちもどうやらその事に気付いたようだ。場の空気が凍り付く。


「……取り敢えず昼休憩も終わるし、今日はここまでにしよう!明日は続きからで、作り始めるの予定だったけど……」

「色の仕分けからね。大丈夫よ、みんなでやれば何とかなるわ!」


 咲耶さんと美咲みさきさんの言葉に同意し、この場は解散する事にした。



         ◇◆◇◆◇



「さぁて、自分の仕事だね」


 時は移って放課後。私は生徒会室にいる。他のメンバーが部活動に勤しんでいる間に、私が雑務を終わらせようと言うわけだ。


「……ん、大丈夫」


 色の違い判るかが鍵であったが、問題なく見分けられる。

 私は戸棚からダブルクリップを取り出し机に置く。そして仕分けを開始する。


         ~ ~ ~


「やっぱりいた」

「ん?天音」


 どれくらい集中していたのだろうか。天音に声を掛けられ、顔を上げる。


「つーくんならしてると思ってた。って言うかもう、結構な量仕分けてるね」

「大まかに分けているだけだよ」


 私は七つの山を大まかに十三の山に並べていた。ここから更に分けて束を作る予定なのだが……。


「私もやるよ」

「部活動はいいの?近いうちに、演奏会があるんでしょ。練習が大事な時期じゃないの?」

「うっ……でも」


 天音は迷う素振りを見せる。……ちょっとちゃかしてみるか?


「放課後は部活動優先でしょ?信じて任せてよ。それに、別に全てやってしまっても、構わんのだろ?」


 どこぞのマンガのセリフみたいな、確認を天音にとる。一度は言ってみたいセリフだよね。


「……本当にしそうだから、迷ってるんだけど」


 ……そんな風に思ってたとは。まぁいい。天音自身が明日の作業時に、仕分けに参加できれば納得するだろう。


「あぁもう。ほら、部活に行ったいった」


 私は天音を生徒会室から押し出すと、隣の音楽室前の扉におく。


「ちょ、つーくん!」

「明日には元の予定通り制作開始が出きる程度には分けておくから。そんで、制作と仕分けを同時進行すればいいだろ?」

「……わかった。その案でいくから、つーくんもそのつもりで作業してね」

「りょーかい。ん、じゃあ部活頑張って♪」


 天音が音楽室に入っていくのを見届けて生徒会室に戻る。そして改めて折り紙の山と対峙する。


「さぁて、やりますか!」


 そう決心してからは早かった。ほどなくして仕分けを完了させる。コレで明日は元の予定通り作業が出来るだろう。これぞ裏方の仕事!って感じで楽しかったな。

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