第6話(終)

「あれっ?」



 遅れて校庭に出て来たおれを、ちょうど近くにいたクラスメートの松井が見つけて声をかけてくれた。「弓槻くん、もう大丈夫なのか? もう少し保健室で休んでてもいいんだよ?」

「ううん。おれ、もう平気だから。……いつも体育サボッててごめんな」

「気にすんなよっ」



 ぱんっ、とジャージの上から背中を叩かれる。……と、松井はあたりを見回すと急にひそひそ声になって話しかけてきた。



「……弓槻くんさ、君と同小の奴が言ってたんだけど、六年生の時から体育イヤになってたって。それって、誰かに何か言われたのか? 俺も五年生の時にクラスの奴から『足、毛深いね』とか言われてさ。それ以来また毛深いって言われるのが嫌で、もうずっとハーパンとか履いてねーしプールも入りたくなかったし……

 ……だかさら、その、何かあったらグチ言っていいから。今まであんまり話さなかったけど……俺でよければ、いつでも聞くから! なっ!」



 ………………



 その松井の言葉に、なんだか胸がスッとした。なんていうか、今までトゲトゲした形の重りが乗っていたところにふわっとクッションが敷かれた感じ。なんか分かりづらいけど。



「……うん。ありがとな」

「おうっ」



 ……別に、トゲトゲの重りが消えた訳じゃない。おれが男として男が好きなのもそのままだ。


 でも、誰かに話せること。おれの話を聞いてくれる人がいること。それが、嬉しい。ありがとうって言いたくなる。



「じゃ先生のところ行こうぜ。俺も一緒についてくから」

「うん、サンキュっ」



 そうして、おれは松井と一緒に校庭に向かって歩いていった。


 ……新しい友達に感謝しながら。

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おれはおかしい 横倉 悟 @ohanashiya

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