over extended.

「綺麗だね」


「そうだな」


 夜。

 星を見てる。


「はい。どうぞ」


「ありがとう」


 グミと、クッキー。

 自分は、どうやら甘いものが好きらしい。数多の食べ物探索により、彼女が見つけ出した。


「おいしい?」


「おいしい」


 いや、実際分からない。グミとクッキーを食べているときだけ、にやにやしていることを彼女が発見しただけ。だから、自分の好物は、グミとクッキー。


「美味しそうに食べるね?」


「そっか」


 美味しそうに食べているのだから、たぶん。好きなんだろう。よく分からないけど。


「あ、ほら。月出てきたよ。月」


 雲間から、月が顔を出した。

 月も。なぜ好きなのか、分からない。追い込まれたときに、咄嗟に言ったことだった。月が好き。


「好きだねぇ、月」


 彼女がそう言うのだから、きっと今。自分は、にやにやしているのだろう。


「好きだな」


 結局、彼女は。自分の生き方について、まったく興味を示さなかった。死に場所を探していることも。しにたがっていることも。彼女にとっては、どうでもいいこと、らしい。


「あっ。月が隠れちゃった」


 彼女にとっては。

 グミとクッキーが好きで。

 月を眺めるのが好きな、人間。

 それが、自分だった。

 それでいい、という気もする。自分は、どこまでいっても自分でしかない。


「あっ。月出てきた。出てきたよ月」


「そうだな」


 自分よりも月の出に一喜一憂している、彼女。彼女のことが、好きだった。これだけは、分かる。彼女の隣がいい。


「にやにやしてるね?」


 彼女が言うのだから、たぶんそうなのだろう。目の前に好きなひとがいるわけだし。

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あなたの秘密 春嵐 @aiot3110

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