第22話 表記は統一しよう

 文章の分かりにくさの原因に表記揺れがある。

 「猿」「サル」「モンキー」といった感じで、同じものにも関わらず違った表現をしてしまうことだ。

 あえて使っている分には問題ないだろう。登場人物の気分によって言葉を変えるのは、ある意味普通だからだ。

 セリフなんかがそうだな。あと一人称の地の文などもそうだろう。


 気をつけなければいけないのは三人称だ。

 三人称は、だたでさえ主語が変わりやすい。それに表記まで変えてしまっては、読み手側は混乱するのだ。


 例

 金井卓也は大学生だ。

 金井は貧乏というほどではないが、それほど金持ちでもない。

 ある日、卓也は大学の食堂で声をかけられた。


「おい、タク!」


 声の主は、なれなれしくも金井の肩に手を回す。

 井口友成だ。

 卓也と友成は高校生からの親友だ。金井はその手を軽く払いのけるとニッと笑う。


「なんだよグチ。メシでもたかりに来たのか?」


  

 こんな感じ。主語を変えすぎだ。

 二人しかでてこないのに覚えることが多すぎる。


 もう下の名前だけでいいよ。

 あだ名もいらん。これ以上増やしてどうすんだ。


 冒頭に書いたが、一人称、二人称はそこまで気にしなくていいと思う。

 だが、なるべく減らしたほうがいいには違いない。

 この創作論だと「筆者」「わたし」「俺」などだろうか。

 あえて変えている部分もあれば、ナチュラルにやらかしている部分もある。

 もし、読みづらさを感じたならば、反面教師にしていただきたいと思う。



 つぎは口調だ。地の文の口調。

 こっちの方がより気にする必要があるだろう。

 ですます調。~だ。~であるなど、異なる口調の混合は特に注意してもらいたい。

 語り部が分離した印象を与えてしまうからだ。

 口調は人格を表す重要なファクターだ。

 多重人格者の語り部にならないように、三人称ではとにかく気を付けてもらいたい。


 これもあって三人称一元は難しい。

 地の文、登場人物の思考と、明らかに口調が変化する。

 適切なタイミングで主語を補足してやらないと、読者は混乱するのだ。

 

 主語が多すぎるとうっとおしい。省略しすぎると語り部が分離する。

 メンドクサイことこの上ない。

 プロはなんであんな上手いんだろうな?

 やっぱ基礎か? なんちゃって執筆者の私には越えられない壁なのだろう。


 ちなみに口調の混合だが、この創作論でもかなり使っている。

 あえてそうしている部分もあるが、たいてい日をまたいだゆえにやらかしてしまっている。

 

 私はあいた時間にコツコツ書くスタイルだ。

 一日一行とかも割とあったりする。

 情緒不安定なオッサンは、日によって気分の浮き沈みが激しい。

 ワッショイワッショイした次の日に、意気消沈しているなどザラなのだ!

 だから、どうしても混ざってしまう。


 これを防ぐには推敲しかない。

 特に語尾に注意しつつ読み直していこう。

 

 ん? おまえは読み直さないのかって?

 

 イヤだい!

 若者と違ってジジイは残された時間が少ないんだ!!

 創作論なんかに、そこまで時間をかけてられるか!



 と、勝手に逆切れしたところで終わりたいと思います。

 ちなみに小説のほうは、投稿するまで十回は読み直していたりする。

 ただ、調査の結果、読み直さず回転速度をあげた方が評価されると分かった。

 ザツでも毎日投稿が喜ばれるみたいだ。オジサン悲しい。


※思いだしたので追加。


 表記の揺れ。一人称では逆にギミックとして使える。

 主人公の成長を描くことができるのだ。

「僕」から始まり、「俺」「私」へと変化していく感じなんかステキだと思う。

 自作品でも使った。

 中でも一番使ったのは精神を乗っ取る作品だ。

 本人は自覚していないが、女に乗り移ると徐々に口調が変化していくのだ。


 しかし、今となってはちょっと後悔している。

 たぶん読みにくいと思う。アイデアはよかったんだが。

 むずかちいね。

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