10話.[やっぱりやだー]
「あー! なんでせっかく一緒にいられているのに課題をやっているの!」
「西香が部活で疲れて休んでいたら溜まってしまったからだね」
「はい、すみません……」
友希に付き合っている身としては全く気にならなかった。
それどころか夏休みでもちゃんと一緒にいられているのが嬉しい。
だから課題の存在に感謝だ、あと、ここでやることを選んでくれた西香にもちゃんと忘れない。
「一時間っ、一時間は頑張るからそれで許してっ」
「別に西香が終わりたいときに終わりでいいよ」
「ですよねー、だって則君はもう終わっていますもんねー」
いまはなにを言っても逆効果になりそうだ。
とはいえ、離れても同じようなことを言われかねない、今日は終わりにして作戦も実行したくない。
夏休み終了間近で慌ててほしくないからやってもらうしかなかった。
全ては彼女のために、そのためにここに存在していればいい。
「うわーんっ、やっぱりやだーっ」
「うわ!?」
ち、力が強い、あと、バレーで飛び込むことになれているからか躊躇がない。
流石に不意打ち攻撃には耐えられずに倒れることになった。
目の前にすぐに彼女の顔、簡単に触れられてしまうような距離。
「もうこのまま寝る」
「ずっとこのままは辛いでしょ、寝たいなら布団を敷くよ」
「ううん、則君にくっついていたいから」
ああまあそうなるか、ずっと四つん這いみたいなことを続けるわけがない。
体温が高いな、元からそうなのか、熱がこもっているのか。
心配になるから飲み物を飲んでもらってから寝てもらうことした、ちなみにそのまま離れてもらう作戦は失敗した。
「則君はよく嬉しいことを言ってくれるね」
「え、それなら好きだと言ってくれた西香の方じゃない?」
「それはそういう積み重ねがあったからだよ」
「積み重ねか」
「うん、そういうの大事だよ」
って、本当にこれを続ける気なのか……。
関係が変わったのはいいけどいきなりすぎてなんか怖い。
途中まで友達の友達だったというのもある。
最初から西香とばかり過ごしていたのならまだいいけど、残念ながらそうではないから。
でも、ここで離れてと言おうものならそれはそれで去られてしまいそうで怖いという情けなさが……。
「おやすみ」
返事がないから肩を揺らしてみたらもう寝ているみたいだった。
どんな才能だろうかと考えた後に自分も寝るために目を閉じた。
これも幸せな時間だ、新たに加わったこれをなるべく長期化させたい。
ただ、彼女みたいにすぐに寝られるようなことは残念ながらなかった。
115作品目 Nora @rianora_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます