第2話 藤沢さんの秘密を知っちゃった!
公園の芝生で犬のモナカとフリスビーをしながら遊んでいると、どこからか子供の泣き声がした。
泣いているのは誰だろうかと見渡すと、僕より小さな姉弟が困っていて泣いていたんだ。
リードを引っ張りモナカと近くに行くと、高い木の枝に青い風船が引っ掛かっている。
どうやら姉弟の風船がなにかの弾みで、手を離れて飛んでいってしまったらしい。
「エーン、エーン。だから風船を貸したくなかったのよぉ」
「だってだって」
聞けばお姉ちゃんの方がお小遣いで買った風船を弟に貸してあげたら、うっかり弟が手を離して飛ばしてしまったようだ。
どうしよう。
困ったな。
僕は木登りが出来ないし、代わりの風船を買ってあげられるお小遣いも持ち合わせていない。
公園は土曜日だというのにお昼が近いせいか、僕ら以外誰もいない。
「大人を呼んでくるしかないかな。僕が誰か助けを呼んでくるよ」
僕が幼い姉弟にそう言うと、二人はキラキラした目で見つめてくる。
「ちょっと待っててね」
公園の管理人室が門の方にあったはずだ。そこなら助けてくれる大人がいるに違いない。
僕が走って管理人室に行こうとしたら、後ろから声がしたんだ。
「待って! 私が風船を取ってあげる」
◇◆◇
僕は声がした方に振り返ると、びっくりな人がいた!
藤沢さんだっ!
そこにいたのは藤沢さんで驚いた。
「
「えっ! えっ? 藤沢さんは木登り得意なの? でも危ないよ」
「大丈夫、大丈夫。……ねえ、神原くんって口が堅いわよね? みんな良ーい? これから見ることはここにいる四人だけのヒ・ミ・ツ。絶対に誰にも内緒よ。言ったら今年のサンタさんは来ないからね」
僕はごくりと息を呑んだ。
姉弟は揃ってうんうんと首を縦に振る。
「♪魔法の呪文を唱えましょう。魔法をかけましょう。ねこねこニャンパッパァ〜♪」
藤沢さんが不思議なメロディの歌を歌うと、ボフッとピンクの煙が藤沢さんの周りを包んだ。
「わあっ、なんだなんだ!?」
「わあ〜、けむりモクモク〜」
「すごい、すこいっ!」
「ワンワンワンッ」
僕も、二人の姉弟も、犬のモナカもびっくりドキドキしちゃって、はしゃいだり声を上げる。
やがて煙から黒いすらっとした猫が一匹現れた!
「まさか、藤沢さんなの?」
「ふふ〜ん。そう私よ、神原くん」
黒猫は喋った。すらすら〜っと。
「黒猫に変身したからあんな木の上でも大丈夫よ? すぐに風船を取ってきてあげるからね」
猫の藤沢さんは得意げに笑って、姉弟にウインクをしてみせた。
……きゅんっ。
僕の胸のあたりが急にぽわわっと熱くなった。
藤沢さん、ちょっと可愛いです。って、思っちゃった。
変な感じだ。
藤沢さんが猫になったこともそうなんだけど、小学校では藤沢さんは無口であんまり喋ったのを聞いたことがなかったから。
だって、今ね、藤沢さんはとってもと〜ってもお喋りだ。
僕はこの時知ってしまったんだ。
クラスメートで隣の席の女の子、藤沢涼花さんは猫に変身できる魔女さんなんだってことを……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。