第6話 コーヒーとパンケーキガメ①

「うわっ……!」


 太陽が眩しい。5月半に入り、気温も日中半袖で過ごせるほどにまで上昇するようになった。元気よく玄関を出たはずが、歩いてすぐぐったりしてしまう。これでは、今日決めていたことが気持ち的にだ。


「せっかく月城つきしろ君とちゃんと話そうと思ったのに……」


 やる気だけが持っていかれてしまった。

 大通を抜けて川沿かわぞいを10分ほど登ると、いつもの見慣れた小さなカフェが見える。煉瓦レンガ造りの洋風建築、つたが壁を走り、「café」とだけ書かれた小さな看板が扉にかかっているでだけ。一見古そうに見えて、中に入ると、それはもうな空間であることは訪れた者しか知らない。裏手に回ってインターホンを押し、いつも通りを待つ。


 ピンポーン


「……」


 ピンポーン


「…………」


 あれ、おかしいな……いつもならすぐ出てくるんだけど。


夏海なつみ〜、学校遅れるよ〜?」


 ケロケロ♪ スマホに着信。だれだろ。


『ごめ〜ん海緒みお、熱で自宅警備中。 今日は一人で頑張って♡』


 え。


『p.s. 2階の窓見て』


 どういうこと??と思いつつ、言われた通り2階の窓に目をやると……そこにはおでこに冷えピタを張りながらも、部屋の中からグッドサインをする夏海なつみの姿があった。めっちゃ顔赤い。ん?モクモクモク……って頭から湯気出てない!?大丈夫なのそれ!?モクモクの実でも食べたの??

 ケロケロ♪


 夏海『あははー熱すぎて湯気も出せそう笑笑』


 me『ほんとに出てるように見えるんだけど……大丈夫なの??』


 夏海『えーまじー? モクモクの実でも食べたかな』


 me『ス○ーカー大佐もビックリだよ全く……』


 夏海『えへへ😝』


 me『じゃぁ私行くけど、安静にしててね』


 夏海『うん、ありがと。 月城君のこと、頑張ってね』


 なっ、なんでそのことっ!?もう一度勢いよく2階の窓に目をやると、夏海なつみが「にしし」と笑ってる。も〜っ!!!!下を出して「」っとしてくるので、私も対抗。お互いベーっとすると、おかしくって笑いが込み上げてた。二人で笑いつつ、夏海に『お・だ・い・じ・に』と口パクで伝え、私はその場を元気よく後にした。


「頑張ろっ……!!」

 放課後何か買ってお見舞いに行こうと思いつつ、もう一度気を引き締める。

 失ったやる気も、いつの間にか戻っていた。





 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

《おまけ:その後の二人のメッセージ会話》


 海緒みお『放課後お見舞い行くね』


 夏海なつみ『ありがと♡愛してる♡』


 海緒『……』


 夏海『あれー、距離を感じるなぁ……最初に言ってくれたのは海緒なのに』


 海緒『え、言ってないんだけど?』


 夏海『言ってくれたじゃん今日の朝に。あ・い・し・て・るって口パクでっ』


 海緒『ちがっ、おだいじにって言ったのっ!』


 夏海『なーんだ期待して損したよぉぉとうと海緒が私の情熱的なアプローチを受け入れてくれたのかとっ』


 海緒『そろそろ学校だから電源切る』


 夏海『えー冷たぁい、もっと話そうよぉぉ(><)』


 海緒『放課後ね』


 夏海『了解♡』


 夏海『あれ、海緒? おーい』

 夏海『海緒さーん??』

 夏海『既読スルーしないで?』

 夏海『ね?海緒?返信しよ?』

 夏海『海緒さぁぁぁぁんっ!!😭』






 _____________________________________

【後書き】

 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 第六話「コーヒーとパンケーキガメ①」

 いかがだったでしょうか。

 題名になんか生き物がいるような……??

 多分気のせいです。


 ヒロインこと鯨井くじらい海緒みおちゃんのお話でした。月城つきしろ君出てこないなぁ笑

 ってことでもうちょい海緒ちゃん視点で続きます。

 二人のわだかまりがスッキリするといいんですけどね。



 コメント・高評価・レビューなど、励みになりますのでよろしければお願いします!それでは第七話でお会いしましょう。おしずまきでした。



【鯨井さんはお魚がお好き】—おしずまき



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鯨井さんはお魚がお好き おしずまき @oshizumaki

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