第5.5話 三角関係はテトラの距離で?
「はぁ〜……はぁ〜〜〜〜」
「
「ひなた先輩〜だってぇ……」
水族館で
『そういえば鯨井さん、何か急いでたんじゃなかった?』
『ん……!ごめんなさい、私もう行かないと……!じゃ、じゃぁね律くん!』
「律くん……律くんって……!!あぁぁぁぁ」
自分で言った言葉が、今になって恥ずかしくなってくる。普段ならあんなこと絶対に言わないのに、焦っていたせいでつい口から出てしまった。
「お〜い、お〜い、
「明日どんな顔して会えばいいの……」
明日の学校で、普段通り顔を合わせることが出来る自信がない。
「何、恋?」
「ち、違いますよ!!!」
「でも完全に恋する乙女の顔だったわよ」
「第一、まだそんなに話したことも」
「なんだ、やっぱり恋話じゃない」
「もう、違いますってばっ」
「ちゃんとやらないとバイト代引いてもらうわよ〜」
「そ、それだけはご勘弁を……」
バイト代を引かれたくはないので、仕方なく仕事に取り組むことにした。ただ、まだどこか心に引っかかる何かがある。
「妹ちゃん、お兄ちゃんっ子なのかなぁ」
まぁわからなくもない。私もあんな人が兄だったら、懐いてしまうと思う。それ以上に好きになんてことも……。
「……どうしよう、これって三角関係ってやつ?」
「あんたまだ考えてるでしょ……いいかげん働きないさいな」
いつの間にか考えていた事が口から
「私どうすればいいかな……とらしば?」
「勝手に名前付けるのやめなさい」
「だって“トライアングルシルバーテトラ’’なんて長すぎません?」
「まぁそれはそうだけど」
「だったらあだ名があった方がいいもんね〜。 ね、とらしば!」
にこっととらしばに笑顔を向けるも、今度はサーっと離れていってしまった。え。
「でも、私も前からその子、気になってたのよね」
「え? 食欲ないですか? もしかして病気とか……」
水族館の魚達の病気は、只事ではない。軽い症状だとしても同じ水槽内の魚に伝染したり、それが悪化したり、最悪死んでしまうこともある。だから、普段から泳ぎ方や食欲などをしっかり観察することが大切。これは飼育スタッフになる時に一番初めに教わったことだ。
「違うわよ。 もしそうなら担当であるあなたにもっと早く伝えてるわ。」
「なんだ〜違うんですね。 びっくりしちゃいました」
「ごめんなさいね。 それに、この子達のことなら
「えへへ、そうですかね」
憧れの先輩から褒められた。嬉しい。
「私が気になるのは、この子の名前よ」
「名前? とらしばの?」
「……ええ、子のこ“トライアングルシルバーテトラ”でしょ?」
「はい、そうですけど?」
「トライアングルは“3”なのに、テトラは“4”って意味なのよね」
「え、そうなんですか」
知らなかった。
「まぁそれが本当に名前の由来かはわからないけど」
「ウッカリカサゴぐらい面白い名前ですね」
「そうねぇ、どちらかというと、トゲアリトゲナシトゲトゲくらい矛盾してるわね」
「どっちなんですかそれ……そもそもそんな名前の子いましたっけ?」
「その子は昆虫よ」
「なんで水族館の飼育員が昆虫に詳しいんですか……」
この人なんでも知ってそうでちょっと怖い時あるんだよね。
「まぁいいじゃない、話のネタになるんだし」
「それはそうですけど」
「とらしば、三角関係の
「なっ、聞いてたんですか!?」
どうやら聞かれていたみたいだ。恥ずかしすぎる。
「ふふふ、彼も魚好きなの?」
「なんでそう思うんです?」
「海緒ちゃん、魚ばかだから、共通点はそこかなって。」
「……まぁ月城君と話は合いますけど」
「へぇ、月城君っていうんだ」
「うわぁ」
引っかかった。罠だ……この人、誘導尋問してる……。
「もしかすると四角関係かもね」
「どういうことです?」
「彼と魚は相思相愛かもしれないから」
「?」
「テトラってことよ」
「……!もう、縁起の悪いこと言わないでくださいっ」
いつの間にか、とらしばも私の方へ寄ってきて、
「あ、先輩、もうすぐショーの時間が!」
「うわ、急がなきゃ」
まだまだやることあるのに……!今日のバイトは、なんだか普段より長いように感じた。
______________________________
【あとがき】
皆様お久しぶりです、おしずまきです。すごい久々です。
ここまで読んでいただきありがとうございます。第5.5話「三角関係はテトラの距離で?」いかがだったでしょうか。
第6話を書こうとしていたのに、いつの間にか番外編になってしまいました。2人が学校で出会うのは次回かな、、、。はよ挙げろよって話なんですけどね(笑)
今回登場の子「トライアングルシルバーテトラ」は、小さな熱帯魚。
他の魚たちと比べ、少し地味ではありますが、銀色に輝く美しい子です。
僕は好き。ちなみに、情報が少なすぎて、名前の由来が本当に数字なのかは詳しくはわかりませんでした。諸説ありってやつです。(詳しい方いたら是非教えてください)
今まで妹ちゃんである
日本が異常気象で40度近いことに日々驚いています。生態系が壊れましまわないか心配。私がいるオタキという街はとても小さく、朝は氷点下まで下がります。赤道より下、南半球なので日本と四季は真逆ですね。英語とマオリ語(先住民族の言語)を勉強中。これが意外と面白い。
それではまた6話で!
[鯨井さんはお魚がお好き]−おしずまきでした!
※次回更新は<8月13日5時>予定
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