第11話 駄目だ!

「駄目に決まってる!絶対駄目!

ふざけるなよ」

陸斗さ、何ムキになってるんだよ。

いい加減にしろよ、今更だぞ。

お前がやれやれって、一番騒いでたのに。


衣装が来て……試着した。

内心どんでもねえよこんな格好!

って言いたかったけど。

お祭り気分のクラスメートの水を差すのもシラけるからさ。 

黙って着て見せたら……

突然怒りだしたお前。


聞いてねぇよ!お前だけ、大正時代の女学生って、黒髪三つ編みウイッグまで被って。



驚いた……可愛くて……反則だろ?

みんなでメイドさんするんだと思っていた。

クラス委員だから看板娘にしたよって、無理無理無理!そこの文化祭委員撲つぞ!


もう~明日の文化祭は俺たち欠席するぞ!


陸斗?誰も何とも思ってないから。

お前だけだよ、その過剰反応……

でも嬉しい!お前の視線が堪らない!

ねえ、お前も学ランすげぇ似合うよ。

ドキドキするわ。


「こいつらお似合いじゃねえ~」

ほら聞こえた?

「良いね~ふたりで学校中歩いて貰おうぜ!宣伝して来いよ。歩く看板だ!二年三組カフェ~」


やった!陸斗と手が繋げるんだ!

ひと目を憚らず。


優、違うんだよ!俺嫌なの!

お前を……親友を……違う。

大事にしたい奴を……

人目に晒すのは。

ジロジロ見る奴、触れようとする奴、写真撮られるぞ。

知らない奴がお前を……

駄目!絶対駄目!

俺だけが見ていたいんだよ!

俺の、俺だけのお前になって欲しい。

こんな事言えない……

それで、ただ怒るだけなんて情けない話さ。


陸斗、俺は明日一日女学生だ。

お前はその恋人設定だぞ。

それ忘れるなよ!

「陸斗さん」

「俺の名前を呼べ!ちゃん付けなっ!」

「優ちゃん」 

良いね~もう一回!

チッまた外野が来たか。

どうせなら陸斗を煽ってくれ!

「お~接吻!接吻しろよ~接吻!しろ!しろ!」

よしよし~もっと言え!

「うるせえ!引っ込んでろ!」

「陸斗さん、よろしくてよ、して下さっても……」

へっ?お前目閉じて……囁くな!

「如何したの?こ、い、び、と」

ウ~ウ~なんだよ~

「早く~早く~早くやれ~」 

外野!刺すぞ!


こんな所でするなんて。

お前もふざけてるのか?

嫌だよ……大切なお前だから。

おい……まだ目を瞑ってる。

良いのか?どうしよう……

俺本気だぞ、もう止まらないぞ。

そっと指でなぞると、ピンク色した唇が微かに震えている。

触れるだけの唇と唇……

お前は俺の胸に顔を押し当て

「嬉しい……大好きだなんだ。陸斗が」

そう言ってくれた。

「愛しているんだ……優、ずっと前から」

頷くお前にもう一度。

少しだけ長く。

少しだけ深く。


翌日恋人繋ぎで一日中過ごした。

案の定、優の周りは人、人、人

そして、俺は壁になった。

大不評だったけどなっ。

構わず浮かれていた俺。


あの日から劇的に変わっていった俺たちの関係。


隣に眠る恋人に、今もどうしようもなくドキドキするんだ。

こうしてお前を見ているだけで、泣けてくる。


変わらず可愛くて男前のお前が、

人生のパートナーに為ってくれた事がただ嬉しくて。


愛してる……


「陸斗……手」

「うん」









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蒼い恋 紫陽花の花びら @hina311311

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