第2話 旅立ち前夜
集落に20ほどある家のうちの一つ、その中でハルとジンは飯を喰っている。
家というには古すぎる造り、木と藁でできたようなもの。
内には居間と窯が二つ、禍々しい仮面と漆黒の刀と純白の刀が飾られていて捨てられかのように斧や剣、刀はもちろん鎌などが地面に転がっている。
漆黒の刀はハル、純白の刀はジンのものだ。
銘は漆黒が
師のそばには常に杖がある。
ジンは足が不自由だからだ。
ある日の戦いで足に傷がつき神経が再生不能まで傷ついた箇所があるから。
大抵の傷は魔法で直してしまうジンだがこの傷はどうにもならない。
因果を切られてどうにもならないらしい。
尚、その傷が気にならないほど強い。
一度片手の素振りを見させてもらってたことはあるが2回ほどで地形が崩壊した。
俺は素振りで地形が崩壊したことなんてない。
ジン曰く、素の力と技術の差らしい。
力は追い付かずとも技術でだけでも20も振ればできるだろと軽くぼやいていたりもしたが正直何年かけても無理な気はしている。
これでも集落の中では力があるほうだが、ジンとジンのばーちゃん名乗ってるハクレイ姉さんには全く勝てる気がしない。
いつまで修行するつもりなのかわからないが、少し森を深く進めば魔物で溢れかえっている。
いくら強くなっても困らないと思い延々と続けているがジンに一撃も与えられない現状何をすればいいかなんて思いつかない。
「なぁハル」
突然ジンが俺の名を呼ぶ。
「なんだよ師匠」
「外の世界に出る気はないか?」
「外の世界...か」
外の世界、この集落を囲んでいる森の先に広がっている世界の事。
一度も見たことがない新しい場所、しかし好奇心というのは薄れて修行することに生きるために生きるという感覚の俺にはいまいちピンとこない。
「おめぇは俺に一撃はおろか服にすら攻撃が与えられてねぇ。おそらく俺という壁が高すぎるんだろうなって思ってな」
「藪から棒にいうことがそれかよ...まぁ間違ってないかもしれないけどな」
「生意気なクソガキだな」
ジンが俺の頭をグシャリとなでる。
掌の大きさは集落の男衆とあまり変わりはしないが師と弟子という関係性のせいかその手からは安心感が流れてくる気がする。
「まぁ、ハクレイとも話して決定しちまったから拒否権なんてないけどな」
「は?」
安心感は軽い殺意へと変貌した。
それを察知したのかジンの片手は杖を軽く握りしめていた。
死期を一瞬悟りそうになった。
「まぁ。続きを語ろう」
ジンは次々と話していく、住む場所、家、場所制度、全て話し終えるのに数時間要したがかなり念入りに準備していたのだろう俺を入らせる予定の学園の受験票まで用意している。
ジンはかなり丁寧に教えてくれる。
試験の内容まである程度教えてくれたが大したものじゃないので特に気になること、わからないことは特になかった。
ジンはなぜか少し簡略か基礎軽く筆記は書くくらいでいいぞと言っていた。
何故かと問うたら「あっちの連中はバカだから」と答えた。
俺にはよくわからなかった。
「最後にお前の
「あ?あれって自分の経験とか願いから生まれる異能じゃなかったっけ?あと適正かなんかねぇと」
「あれ?あるっていってなかったけ?まぁいいか。テメェの
「なんだその異能?」
「それはいつかわかるさ。まぁどういう異能かわかってないってことは発現はしてるけど実用段階じゃないってことさ。ふと頭の中に浮かぶ時がくるからそれを待ちな」
「わかったよ。んじゃ寝てもいいか?」
「いいぞ」
___すぐ寝た。
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