鍛冶師の弟子~最強な師に届く一撃を求め学園へ~
星宮 穹
序章 一撃のために
第1話 ある田舎の師弟
ココはある山中にある片田舎。
ただひっそりと50も満たない人々が暮らす集落。
心地よい風が住民たちの頬を撫でるだけの空気のように静かな場所。
そこから数里離れた場所では鉄が重なり合い煌めきと静かな重音が響いていた。
銀の筋が無数の線を描き続ける。
その輝きはその場に残り10、20、30と数を増やしていく。
そこに在るのは2人の影。
一歩も動かない着物を身に着け刀を帯びた男と、同じ装飾をした少年がとりどりな動きで刀を振るう。
少年の無数といってもいいほどの銀の筋は男を捉えている、が男は動かない。
皮膚の薄皮一枚、着物の糸くずさえその筋は届いていない。
男は動かない、否全ての筋を切り止めている。
動きを読まれている、といってもいいほどに。
それでも尚少年の銀の筋は消えゆかない。
当たらなければ次の一筋を、まだ当たらなければその次の一筋を。
闇雲にならず狙い、動き、刀を強く握る。
そして斬る。
できた筋が100を超えても当たりはしない。
少年はこの挑戦を既に1億、2億と今までにやってきた。
相手は余裕面を決め込んでいる男一人。
焦る姿はなく、表情すらも変わりはしない。
そんな男も片足が動く。
刀に添えていただけの手は柄を握りしめる。
少年の動きはすくむ。
恐怖を覚えたからだ、脳が自動的に捉える死という名の幻影、終局。
しかし、少年は地面を踏みしめ続く一刀を振るう。
それは届くことはなかったが...。
否、振る寸前に少年の握りしめていた刀は手の中から消え失せていた。
そこには静寂と、男の呟きが空間を占めていた。
「
そこには少年の様な銀の筋はなかった。
在るのは筋、いや筋と言うには妙。
ただそこが切り開かれた、それの跡が残っているだけだった。
掌にあったものを失った少年はしりもちをつき、ため息をつく。
「嗚呼、師匠強すぎますって」
少年、ハル・アルシュタインは愚痴をぼやく。
「はぁ、テメェが弱いだけだよ雑魚修行不足だ」
少年の師ジン・グレールは愚痴に現実を叩きつける。
「弟子に雑魚はないでしょ...」
「まだ一振りも俺にはあてれてないやつが何を言っているんだか」
「...。チっ」
ハルは舌打ちをした。
精一杯の憎たらしさを込めて。
「オイ、いい度胸じゃねぇか、出血大サービスだ」
体が震えている。
上位生物に襲われる下位生物のように。
後悔は、後でした。
反省はしたくない。
ジンが強すぎるというか無敵なだけだと思うから。
「さばいてやんよ!!」
無数の筋が煌めく。
銀色がハルの時の数倍だか幾倍かわからないほどに。
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