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「ハルカゼちゃん、可愛いね」


 ハルカゼが恥ずかしさのあまりトイレに走り去った後、シンジュが話しかけてきた。

 小川と同じく、少しアウトローな雰囲気の女子生徒だ。男装やコスプレなどが似合いそうな見た目をしている。


 腰まで伸びた毛髪は明るい金色で、背が高くてモデルのようだ。

 それでいて、どこかボーイッシュ。男子だけではなくて、女子にもモテそうだ。


 俺は質問に答える。


「まあ、ハルカゼは可愛らしいと思うよ。少し天然すぎる気もするけどさ」


 すると、今度は小川が話しかけてきた。


「シンジュは見た目いかついけれど、校則やルールは遵守するタイプだから、ハルカゼちゃんの隣に置いておけば鉄壁の守りになってくれると思うぞ。我が従兄妹ながら恐ろしや〜」

「シンジュさんはいいのか? ハルカゼ、塩対応だぞ?」

「私、ハルカゼちゃんには借りがあるんだよね」


 シンジュが教えてくれた話は、とても温かいものだった。


「私、この高校の受験日にさ? すごく緊張していたんだ。面接の時間にちょうどハルカゼちゃんと同じグループになってね。流石に緊張をほぐすために同じグループのみんなに話しかけるわけにもいかなくて。その内、寒くなって、ぐずりそうになっちゃったんだ」

「シンジュさんは本番に弱いタイプなのか」

「シンジュでいいよ。鼻をズズっとさせていたらね? なんと、ハルカゼちゃんが無言でティッシュをくれたの」

「あ、ハルカゼならしそう!」

「でしょ! ほんといい子だよね」


 そこで小川がニヤニヤと笑って、従兄妹をからかった。


「借りの内容が鼻水ってウケるぜ」

「鼻水じゃない! ティッシュ!」


 シンジュはツッコミを入れる。そんな二人のやりとりに、思わず、俺はフフッと吹き出してしまった。


 その時、教室の入り口あたりからじっと視線を感じた。


 そこを向くと、ハルカゼがジト目でこちらを見ていた。

 扉をぎゅっと握って、どこかむすっとしている。


「じゃ、コウ。十分休みそろそろ終わるから、また後で」

「あ、うん」

「さらば、従兄妹よ」


 シンジュが自分の席に戻ると、今度はハルカゼがお隣に座って、ぷいっとそっぽを向いた。

 あれ?


 もしかして、俺とシンジュが会話していたから、寂しくなったのか?


 そんなはずないと思うんだけど。

 基本、幼馴染の俺に対しても、ハルカゼは塩対応だし。


「ハルカゼ?」

「コウ。放課後……。一緒にいる時に話があるから。わたしとコウ、二人きりの時間に……」

「え、うん」


 ぷいっ。またハルカゼはそっぽを向く。

 小川の方を確認すると、こちらにグッドラックを送っていた。

 さて、俺とハルカゼは平和な青春を送れるのだろうか。


――――――――

あとがき

 ちなみに平和な青春は送れます。

 体調と相談しながら、こっそりと更新していくので、ハルカゼの優しい塩対応を見守ってくれると嬉しいです。

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