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「こんにちは」
ハルカゼの横から声をかけてきたのは、小川と似たような雰囲気のボーイッシュな女の子だった。
とびきりかわいくも見えるし、とびきりかっこよくも見える。
「こんにちは……」
ハルカゼは小声で挨拶を返すと、ほっぺを赤くして俯いてしまった。
恥ずかしいのか?
俺の幼馴染はもともと、ほとんど俺としか話さない。
唯一の話し相手の俺にさえ、塩対応なのだ。
この子とも簡単に打ち解けられるとは思えない。
ボーイッシュな女の子はにこにこと笑いながら、ハルカゼに話しかけていく。
「わたし、シンジュっていうの」
「シンジュさん……。わ、わたしはハルカゼです」
「かわいい名前ね」
「し、シンジュさんも……」
ハルカゼはおろおろとしながら、そっと隣の席にいる俺の学生服の袖を握ってくる。
その可愛らしい仕草に俺はもちろんドキッとして、ソワソワした。
シンジュはまるで幼子に話しかけるようにして、言葉を続けていく。
「コウくんに触れていると安心するの?」
「安心っていうか、なんというか……」
「ハルカゼはかわいいね」
「かわっ」
ハルカゼは真っ赤になると、顔からプシューと湯気を出して、自分の唇を甘噛みしてしまった。
心底、シンジュが女の子でよかったと思った。
もし彼女が男子生徒だったら、俺は嫉妬していただろう。
そこで、小川がシンジュに声をかけた。
「シンジュは俺の従兄妹なんだ。見た目通りのワルだぜ」
「ワルは君だろ? アルバイト掛け持ちしてるくせに」
「しー!」
シンジュに言われて、小川は慌て出す。
たしか、この高校はアルバイトの掛け持ちが禁止されているはずだ。
なので、無粋かと思ったが、手伝えることはないかと思って、俺は聞く。
「そんなにお金に困っているのか?」
「いや、俺ゲーマーなんだよ。一つのゲームにたらふく金をかけているわけじゃないんだけど。気になったタイトルは全部やってる。するとどうなると思う?」
「どうなるんだ?」
「時間がなくなる。バイトとゲームばかりの充実した毎日を送ってるよ。勉強は授業のだけで十分」
「小川は頭がいいんだな」
「コウくん、悪知恵が働くだけだよこの人は」
俺、小川、シンジュが談笑していると、ハルカゼはますます顔を真っ赤にして、アニメチックにかわいく瞳をぐるぐるに回して、スカートを押さえて席を立った。
「わ、わたし、トイレ!」
そのまま、廊下の方へ小走りで向かってしまった。
俺が心配そうに見ていると、小川とシンジュから肘で小突かれた。
どういう意味だよ。
――――――
お久しぶりです、りんごかげきです!
最近、胃を悪くしてしまって、趣味のお絵描きなどをして養生していたのですが、カクヨムも気分転換に更新して、楽しんでいきたいと思います!
♡や☆から元気をもらっています。これからもよろしくお願いします。お互いに楽しく生活していきましょう。
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