6

 教室にいる時のこと。


 今日もハルカゼは恋愛小説を読んでいた。


 どうやら、昨日帰宅した後も読んでいたようで、お昼休み、ちょうど彼女が読み終えた時に話しかけるこができた。


「なあ、ハルカゼ」

「……?」


 ハルカゼは、じっと俺の瞳を見つめてくる。


 彼女の澄んだ瞳の色にドキッとした。


 俺とハルカゼは隣の席同士だ。


 この前、読書の邪魔になるんじゃないかと思って、教室で話しかけずにそっとしておいたら、じつは話しかけてほしかったと言っていたし。


 だから、会話を試みたのだが、クラスメイトのいる前で恥ずかしかっただろうか?


 だって、俺たちは今月入学したばかりだ。


 まだ、完璧にクラスの雰囲気を掴んだわけじゃない。


 けれども、俺は声をかけたのだから、ちゃんと質問することにした。


「どうだった? 面白かったか?」

「うん。主人公が優しくて、ヒロインが可愛くて、よかった」

「…………」

「…………」


 全然、会話が続かない。


 時々、俺たちにはこういう時があるのだ。


 俺は自分の横髪を撫でながら、言葉を返した。


「そっか。よかった」

「うん」

「…………」

「…………」


 しばらく、無言で見つめ合う俺たち。


 ついに、俺は根負けしてしまった。


 ハルカゼには敵わない。


「じゃ、後で」

「わかった」


 恥ずかしいのは俺の方だったのか……。


 帰る時に、ちょっとハルカゼに聞いてみよう。


 また、話しかけてもいいのかって。


 俺が前を向いてドキドキしていると、左隣の席のヤンチャそうな男子生徒が小声で話しかけてきた。


「おいおい、君らって付き合ってるのか?」

「は……⁉︎」

「あ、ごめんごめん。初々しくて」

「一応、俺とハルカゼは幼馴染だぞ」

「幼馴染……⁉︎ ラブコメ……?」

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