矛盾

B型の彼だった。

酔うと声や動きが大きくなって、隣のお客さんやお店の人に「すみませんねぇ」って笑顔で謝るのが飲み屋での私の仕事だった。

うん、それは昔の話。



何年かぶりに会った彼は、お酒にうんとうんと強くなっていて、どんなに酔っていても、私に触れようともしなかった。

もう、おばさんだもの。

お肌のお手入れを重ねてもこのくらいにしかなれなかった。

体だってあの頃よりかなり?ううん、出産もしてうんと丸くなって、

「抱きしめたい」

だなんて思ってももらえなかったのかしら。


はー、会うことを決めてから、ドキドキして、着ていく服考えて、なにを喋ろうか、うまく喋れるかしら、なんて一日中頭の中を駆け巡って、

「嫌いで別れたわけじゃないの」

って、いい雰囲気になる予定だったのになぁ。

そんな妄想も楽しかったのに。


さぁ、現実に戻ろう。

最愛の夫が駅で私の到着を待っている。

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ショートストーリー ひらり @hirahira34

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