あれから、10年の時が過ぎた。


 わたしは23歳になり、小さな印刷会社に就職して、東京で1人、暮らしていた。

 あの日、出口の前、お別れの時、わたしたちはある約束をした。


 “おじいちゃん、おばあちゃんになって人生を全うしたら、また三途の川で再開しよう。それまでお互い全力で生きよう”と。


 最後の最後、扉をくぐり抜けるとき、春太は初めて私の名を呼んでくれた。


『すみれ!負けんな!!生きろ!!絶対、絶対生きて幸せになれ!!!』


 その言葉はわたしの生きる力の源となって、悲しい時、寂しい時も、いつだって励まし、支えてくれる。

 誰にも言えないわたしの初恋は、あの日終わってしまったけれど、いつまでもわたしの中で宝石のように輝き続けている。

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三途の川辺で恋をした あおい @aoimam

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